パスタは体に良いぜ!

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 3
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ヤマガタ・サンダンデロの会合で挨拶する奥田シェフ。
山形の物産を頭上の拙画を使って説明してくれます♪

本日も「医食同源・マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ!」の3話めをUP。

写真を新しいものにしているためかわかりませんが、意外にアクセス数があるんですね。それに自分で書いて言うのも何ですが、けっこう良いことが書いてあるんですね〜(自分ではそう思ってますが、どうでしょう?)。

10年あまり経って、イタリアンの世界も様変わり。
前回と同様、写真は山形イタリアンのヤマガタ・サンダンデロを使わせてもらいました。

10年前だと、ちょうどアル・ケッチァーノは有名になりかけくらいだった頃。
素材を生かしたイタリアンのレシピと、山形の食材(とは限らないけど)が融合したさまざまなお皿と記事を楽しんでいただければ幸いです。

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 3
パスタは体に良いぜ!

掲載日:2004年7月22日

 まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!

いやあ、普段なら梅雨明けの時期だってえのに、何だかすげえ暑さだよな~。

まったく東南アジアとかインドを思い出すような凄まじい猛暑で、体の方がまいっちまいそうだが、あっしらの商売だと、やっぱり「夏は暑く、冬は寒く」ってえのが良いやね。

昨年はここ10年のうちで珍しい冷夏だったけど――やはり冷夏にせよ暖冬にせよ、商いの足しになることはない。夏はやっぱしカーっと暑く、カーっとビールでもかっくらって景気づけをしてもらわねえとな。

その点、今年はわるくねえ!

ビールを飲むと、牛も人間さまも食欲が増進されるのか・・・ビヤガーデン、居酒屋、レストランなど、あっしのお得意さんにしても、おおむね好調なようさね。今のところ夏の商戦に向けて売り上げの方も、この猛暑のおかげでまずますといったところだ。

せいぜいこの猛暑を追い風に、このイダテンのゲンさん! みなさま、お客さまがたにタップリと勉強いたしやすぜ!

そろそろ毎年恒例のシーフード・ショーが、東京有明の国際展示場はビッグサイト(2004年7月の21日~23日)で開催されるとあって、あっしもそれに向けて大忙しさね。

どうぞ、この夏もよろしくお願いしやす! 

パンよりパスタ、それがイタリアン!

今回はイタリアンの3回目。さーて、お客さんがたはイタリア料理といえば、何を思い出すかい?

トマト、オリーブ、ピッツァ、マカロニ、スパゲッティ・・・。お、お、お、みなさんは玄人衆のわりにストレートな答えをするね。だがまあ、そのあたりがイタリアンのスタンダードであり、基本の食材と考えて良いだろう。

中でもマカロニ、スパゲッティといったパスタは、イタリアンの中で最も重要な分野と呼んでも過言ではない。

知ってるかい? イタリア人はパスタに気をとられるあまり、西洋の主食であるはずのパンには何とも淡白になったほどなんだぜ。

イタリアにはカトリックの総本山があって――「パンはキリストの肉」とする教えがあるというのに、連中の食べるパンときたら、何とも物足りなく、歯ごたえのねえもんだ(まあ、イタリアのやわらかいパンは、あっしくらいの年齢には丁度良いんだけどな)。

ことパンに限って言えば、ドイツやチェコのような中欧諸国にように、他の食い物にバラエティのない国の方が、しっかりとしたものを作っている。

パンよりもパスタが主食――それがイタリア料理を象徴しているのかもしれないな。

日本人は米が主食、ではイタリア人は?

もっとも、この主食って言葉はくせものだ。

余談になるが、日本には「定食」という食の形式がある。定食はあっしら日本人にとっちゃ当たり前のもんだが、欧米の連中から見ると、米を中心にメニューを組んでいる点が変わっているらしい。

いわばご飯はお天道さま。日替わりメニューのおかずは、そのまわりの惑星として、毎日ご飯のまわりを回転している――定食のメインはあくまで米なんだな。

日本人はよく「日本人は米を主食にし、欧米人はパンを主食」なんてことを言うが、これはあっしらに「主食=穀物」という固定したアタマがある証拠さね。

主食というのは英語で言えばメインフードだが、連中の基準で言えば、これは穀類に限ったことじゃない。欧米なら今日のメインフードは肉、明日は魚、その付け合わせにパンを食べるといった具合に、穀物以外の主食がいくつもあるわけだ。

 

あっしは以前、知り合いのアメリカ人が「ビーフ・ボウル(牛丼)は、野菜タップリで実にヘルシーだ」と言ってたんで、びっくりしたことがある。

わかるかい? 牛丼さんが「野菜タップリ」だぜ。

よくよくワケを聞いてみれば、その野菜ってえのはライスのことなんだと。連中にとっちゃご飯が野菜なんだな。おそれ入谷の鬼子母神、肥満が増えるのもやむなしさね。

ともかくも欧米人にとって、米は少しも特別な存在でなく、ジャガイモやトウモロコシ、豆類といった野菜や穀類のひとつに過ぎないのさ。

もっとも大阪あたりじゃ、うどんをおかずにご飯を食べる。

なにもデンプンどうしを一緒にしなくっても良いだろうって思うんだが――このあたり、あっしら江戸っ子からすると、大阪が外国に見える由縁なのかもしれねえな。 

古代ローマに生まれた生パスタ

日本人が銀シャリ(白米)を中心に食べるのとは対照的に、イタリア人が食べるパスタのバラエティ、数の多さは大変なものだ。イタリア人の誰に聞いても、どれだけパスタの種類があるのか正確に答えられる者はいないくらいだ。

そんな意味で、パスタはイタリア人の主食のひとつと言って良いだろう。

パスタの起源は古く、およそ2000年以上も昔に遡るらしい。

それ以前の古代ローマ人はプルテスと呼ばれる、小麦粉を粥状に溶いたものを食べていたという。これは、前回にもお話したポレンタ――つまりトウモロコシの粉を溶いた北イタリアの料理に近かったと思われている。

土を水で溶いてこねて窯に入れると、焼き物ができあがるように、小麦粉も水で溶いてこね、焼いたり茹でたりすれば色々な形ができあがる。きっと、こういった粥状の食べ物は、時代によってさまざまな形に進化していったんだろう。

穀物を粉に挽いて、水でこねた食べ物というのは、焼き物と同様、世界中どこにでもある食べ方で、そのせいかパスタの起源については諸説紛々だ。

最初のパスタ(生パスタ)は小麦粉を薄く伸ばして、食べやすいように細長く切ったりしたものと考えられており、おそらくは薄べったい、きしめん状のタリアテッレか、シート型のラザーニャではなかったかという説が有力だ。 

アラビアで生まれた乾燥パスタ

これで同じイタリアのパスタでも、生パスタと乾燥パスタでは、どうもそのルーツが違うという。

乾燥パスタの方は、もとからイタリアにあったものじゃなく、12世紀頃にシチリア島を治めていたサラセン人――今でいうアラビア人が伝えたものだそうだ。

まあ、アラビア人といえば言うまでもなく砂漠の民、そして12世紀頃のアラビアは、現在のヨーロッパよりはるかに高い文明を持っていたという。交易に向う商隊が砂漠を横断するための保存食に、乾燥パスタは必要の上からも、気候の上からも、ごく自然に生まれたものだろう。

その中で、小麦粉を水で練りこんで風と太陽にさらしたものが、今のマカロニの原型といわれている。管状に穴をあけることで、乾燥しやすく保存に耐えられるようにしたわけだ。

パスタがアラビア経由だった名残りというべきか――北アフリカのモロッコやチュニジアでは「クスクス」という食材がある。

パスタと同じデュラム小麦を練りこんで顆粒状にしたもので、こいつは独特の匂いがあって、人によって好き嫌いが分かれるが、ラムやマトンを用いた香りの強い料理にはよく合うんだ(クスクスはおフランスで人気の食材なので、パリで食べたなんて方もいらっしゃるかもしれねえな)。

ともかくも、生パスタと乾燥パスタってえのは、互いに異なるルーツを持つ食材なんだ。

生パスタを乾かすと、乾燥パスタになるってもんじゃなく――よく似た別の食べ物だったのさ。

だが、ローマ時代から生パスタに慣れていたイタリア半島の住民は、あとからやってきた乾燥パスタをすんなり受け入れた。

その上、南イタリアの風土はデュラム小麦の成育に適していたんだな。さらに、乾いた空気、風、日差しなどがパスタを乾燥させるのにうってつけだったこともあり、たちまち乾燥パスタはイタリア南部の一般的な食べ物となっていったのさ。

サラセン人の小麦って?

今も言った通り、乾燥パスタはもともとシチリアを経由して、長靴の先っぽにあたる南イタリアで発達したものだ。イタリア全土で乾燥パスタが食べられるようになったのは、ごく最近――19世紀の産業革命以降、大量生産ができるようになってからの話らしい。

繰り返すが、パスタに使う小麦ってえのはデュラム小麦という硬質小麦で――こいつらはグルテン、つまり小麦タンパク質の含有量が高く、胚乳の部分がガラス質になっているのが特徴だ。

デュラム小麦の粒を取り出して押し出してみると、ひじょうに固く、ふつうの小麦のように簡単には潰れない。噛むとコリっとして、かすかに甘いのさ。

シチリアではこのデュラム小麦のことを、サラセン小麦(グラーノ・サラチェーノ)と呼ぶ。

サラセン――つまりアラビア人の小麦って意味で・・・まあ日本でいえば、鹿児島で薩摩芋を「琉球芋」、沖縄で「唐芋」と呼ぶことがあるようなもんかな(サラセン小麦粉というとはシチリア以外の地域では、そばのことを指すそうだがね)。

そばパスタ――その実力やいかに?

前回もお話したと思うが、イタリア料理ってえのは、貧しさから生まれたレシピが多い。

肉なんかでもフィレやロースのような高級な部位ではなく、スネ肉や内臓を手間ひまかけて工夫したものがあるし、生パスタの場合、他の種類の小麦粉やそば粉、クリ、アワなどの雑穀を混ぜることが多い。

イタリア本国では、乾燥パスタを「100%純正のデュラム・セモリナ粉(※1)を原料とする」と定めているのに対して、生パスタは混ぜ物を入れて作る方が一般的なのさ。

生パスタにデュラム・セモリナ粉以外のものを入れるというのは、練り込みやすくなるという理由のほかに、まだイタリアが貧しかった頃、有り物の雑穀を混ぜて食べていた頃の名残がある。

場合によって、生パスタ類は小麦粉にデュラム・セモリナ粉を使わないことも多い。

北イタリア名物のニョッキは通常の小麦粉にジャガイモを混ぜるし(※2)、ミラノ周辺の郷土料理には、そば粉を混ぜたピッツォケリとかいうパスタも食されるそうだ。

何でもそば粉に小麦粉を加え、ジャガイモやキャベツと一緒に茹でて、チーズやバター、生クリームと合えるものだそうで、冬などはよく暖まるメニューとして地元で人気だそうだよ。

 

ところで、最近は日本でも「そばパスタ」なるものがブームになってるようだ。

そば粉5割、デュラム・セモリナ粉1~2割、あとは薄力粉や強力粉などを用いたもので、

色は黒いが気だては良い♪・・・って感じかな。

あっしも一度、長野産・そばパスタを食したことがあるが、タリアテッレのような平めんで、なかなかイケるもんだ。少しポソッとした食感に、ソースがよくからんで――こいつはそばというより、もう完全にイタリアンパスタの一種だな。

お客さんがたも、一度試してメニューに加えてはいかがかな?

※1 デュラム・セモリナ粉とはデュラム小麦を粗挽き(セモリナ)したもの。挽き方と粗さでさまざまな等級がある。

※2 実際はニョッキはパスタとは呼ばない。ただリストランテやトラットリアのメニューでは、パスタと同じプリモ・ピアット(一皿目)に入れられる。

パスタは体に良いぜ!

ところでデュラム小麦は糖質の吸収速度がゆっくりで、消化吸収もゆるやかなぺースでなされるそうだ。食後の血糖値もゆっくり上昇するらしいから、糖尿の気がある人には良いかもしれないよ。

パスタというのは完全食品になり得る要素を持った食品だ。

もっとも、スパゲッティの場合、デンプン質は約72%、タンパク質は約13%に脂質、繊維質、ミネラル、カルシウム、ビタミンB1、ナイアシン、鉄分等々・・・バランスのわるい数字でもないが、だからといって完璧な栄養素でもない。

パスタだけで、まんべんなく栄養を摂ることはむずかしいのに、なぜそれが完全食品になりえるかといえば、それは素うどんのようにパスタだけで食べることは、ほとんどないからさ。

オリーブオイル、トマトなどの各種野菜、魚介類や肉類など、一皿でバランスよく、しかも美味しく栄養を摂れる素晴らしい食材――それがパスタなんだ。

 

おっと、時間が来ちまった!

次回はパスタの種類やレシピ、郷土料理などについて、お聞かせいたしやしょう。

ビールの旨い季節になってきたな。今日は中目黒のサボイで、ピッツァをビールで流し込むとしようかな。

それじゃ、お客さん。次回をお楽しみに!

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