パルミジャーノはチーズ界のホンマグロでい!

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 10 
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いつものヤマガタ・サンダンデロ、フグとカラスミの冷製カッペリーニです♪

昨日から機嫌のわるかったWordPressですが、管理してくれてる友だちが工夫してくれたおかげか、どうにかUPができるようになりました。

本日は写真と文章がほどよく入れられる「医食同源・マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 」の10話めをUPします。

お楽しみくださいませ!

イカとあさつきのキャビア添えです♪

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 10
パルミジャーノはチーズ界のホンマグロでい!
掲載日:2004年11月02日

 まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!

いやはや、お客さん。

先日の新潟県中越地震はえらいことになっちまったな。被災者の方はお年寄りも多かったそうで、ショック死された方もおられたことが、何とも気の毒だ。

被害に合われた方々には、謹んでお悔やみ申し上げやす。

あっしの知り合いの酒造会社も被害に遭われたとこがあって、大変なことになっている。

ともかくも、みなさん。お酒でもお米でも、新潟産の商品――それも被害の大きかった中越地方の製品を買ってやっておくんな。神戸の時も、そんな地場産業の支援が、小さくっても大きな支えになったって話だしな。

それにしても長い間を雪の中で過ごすせいか、新潟の人は辛抱強い。そんなことを感心されても、被災者の方は嬉しくもねえだろうが――寒いだろうに、ひもじいだろうに、みな余計な文句も言わず、じっとガマンしている。

地震の規模に比べると、被害が比較的大きくならなかったのは、人口密集地でなかったことに加えて、この我慢強い県民性によるのかもしれない。ともかくも、1日も早い復旧を願うばかりだ。

トピックスでも申し上げた通り、スイサンドンヤ・ドットコムさんの発送も不都合が出てくるってもので・・・ご注文の際のご考慮、ご理解いただければ幸いでやす。

パルミジャーノ vs 粉チーズ(エミリア-ロマーニャ州)

さて、ご好評いただいてるマンマミーア・イタリアンもはや10回目。

今回は前回につづき、美食の都・エミリア-ロマーニャ地方についてお話いたしやしょう。繰り返しになるけど、エミリア-ロマーニャ地方はローマへの道・アエミリア街道沿いに発展した土地柄だ。

ヨーロッパ最古の学府・ボローニャ大学を中心に、極めて高度な文化や学芸が発達した地域だということに加え、イタリア最大の大河・ポー川がもたらした肥沃な大地は、とてつもなく豊かな食材を提供した――と、ここまでは前回もお話した通りさね。

エミリア-ロマーニャを代表する食材は、何と言っても、パルマの生ハムやパルミジャーノ・チーズ、モデナのバルサミコ酢などに代表される、時間と手間ひまをかけた典型的なスローフードにあるんだが――それらもみな、この豊かな土地の生み出した恵みといえるだろう。

地図を見てもわかるように、エミリア-ロマーニャは殆どが内陸だ。海の名物もないことはないが、やはり肉やチーズ、農作物による食材がダントツに素晴らしい。

特にパルミジャーノ・チーズ・・・英語名パルメザン・チーズは、この地の特産品。名物に旨いもんなしなんて、この地に関しちゃあ、まるっきり当てはまらない。

今回はエミリア-ロマーニャが生んだ、食材のスーパースター「パルミジャーノ・レッジャーノ」について、とことんお聞かせいたしやしょう!

ウニと海苔のパスタは絶品♪

粉チーズはなぜアメリカ経由で来たか?

前回はスパゲッティ・ミートソースについてお話したが――みなさんの中には、スパゲッティにタップリの粉チーズをかけるのが好きな方も多いだろう。

だが、カンの良いお客さんならご承知のように、この粉チーズ・・・パルメザン・チーズはピザパイやスパゲッティ・ミートソース、ナポリタンなどと同様、アメリカ経由で日本にもたらされたモノなのさ。

なに、ゲンさん。今どき粉チーズとか、ピザパイなんて言う人はいないって?

うーん。そう言われても、あっしの世代だと、ピザパイやナポリタン、ミートソースに粉チーズかけて食べるのは、ハイカラな食べ方だったんだがな~(ハイカラも今どき、言わなねえか・・・)。

これらの料理がアメリカ経由で入ってきたというのは、ひとえに大東亜戦争において日本が敗戦国だったことが大きい、とあっしは考えている。

学校給食のパンが、アメリカから輸入された小麦だったことは有名な話だが、スパゲッティの小麦やチーズにおいても同じことが言えただろう。戦後すぐの時代、スパゲッティにイタリア産のデュラム-セモリナ粉を使っていたとは考えにくい。おそらくはマカロニやスパゲッティも、米国産の小麦粉が主原料だったんだろう。

もちろん粉チーズのルートはすべてアメリカ経由。

粉チーズが給食のパンと同じ、国策で輸入されたかどうかはわからないが――それまでチーズを食べなかった日本人にとって、それは初めての味だったことは言うまでもない。比べるものがなかったてことさね。

アメリカにはイタリア移民が多かったが、世代が進むにつれ、おろすのが面倒な固まりではなく、粉にしたチーズを使うようになっていった。「パルメザン」というのは、もとはフランス語でパルマ周辺のことを指すらしいが、それが粉チーズ全体の総称になったということさね。

 

EUパルメザン対決、結末やいかに?

パルメザン・チーズは正式名を「パルミジャーノ・レッジャーノ」と呼ぶ。これはパルマからレッジョ・エミリアという2都市と、その県域をあらわす地名から来た呼び名だ。

本来なら「パルメザン・チーズ」と「パルミジャーノ・レッジャーノ」は、意味的にも同じもののはずだが、実際は大きく違う――まったく似て非なるものなんだ。

アメリカ経由の粉チーズの多くは、アメリカやオーストラリアなど、イタリア以外の国で作られたチーズを粉にしており(日本の国産メーカーでも同じ)、その製法はもっと短期間で大量生産できるし――当然、価格もはるかに安い。

そんなワケで、いつの間にか「パルメザン」は「粉チーズ」を意味する言葉になちまったってワケさね。

ブランドイメージが傷つくとして、困り果てた本家パルミジャーノ・レッジャーノの生産者たちは、「パルメザン」という表記の差し止めを、EUの裁判所に申し立てをしてそうだ。

まあ、どんな具合になるのか、とくと拝見ってとこだね。

キジと野菜のポトフは珍味♪

 

パルミジャーノはチーズ界のホンマグロでい!

パルミジャーノ・レッジャーノの名称が、パルマからレッジョ・エミリアという限られた土地で作られた物のみ――という規定が定めれたのは1955年のことで、たかだか50年足らずの話。イタリアの先住民エトルリア人が、2000年も前から作られていたとされるこのチーズの歴史から見ると、たいして昔のことではない。

北イタリアのポー川の流域でも、「グラーナ・パダーノ」と呼ばれる、同じハードタイプ&セミファット・チーズは作られていて、それらも非常にクオリティは高い。

グラーナというのは、「粒の」という意味で、食べた時のぷちりとした食感によるものだ。

パダーノというのは、「ポー川の」という意味だ。だから同じハードタイプのチーズは、エミリア-ロマーニャ州のみではなく、ポー川流域のピエモンテ州、ヴェネト州、ロンバルディア州にまたがって作られているんだ。

だがパルミジャーノ・レッジャーノだけは、ブランド的にもずば抜けて高位に立つチーズ界のローマ教皇――マグロで言えば、天然のホンマグロみたいな存在といえば、サカナ屋のみなさんもご納得だろう。

19世紀イタリアのライベルティとかいう作家は、

「オリンポスの山頂から小さな神々を睥睨するジュピターのごとく、チーズ世界に聳え立つ王者」などと、パルミジャーノ・レッジャーノを賞賛しているそうだ(バカヤローだねえ、どうにも)。

まったくイタリア人ってえのはカッコつけて、おおげさに騒ぐのが好きな困った連中だが、たしかに最高級のパルミジャーノってえのは格が違う。

なんせ、イタリアの銀行は、パルミジャーノ・レッジャーノを担保にお金を貸してくれるくらいなのさ。銀行の中には、チーズの熟成庫をもっているところがあり、そこにはベテランの熟成士がいて、きちんと管理をしているとかで――たかがチーズとはいえ、土地や家なみの価値を持っている、まさにチーズの王様なんだ。

(スイサンドンヤ・ドットコムさんでも、この素晴らしいパルミジャーノ・レッジャーノを出血の価格で扱っているよ。どうぞ試しておくんなせえ)。

たらの白子のつや姫リゾットです

 

パルミジャーノで儲かるのは銀行だけ?

そんなパルミジャーノ・レッジャーノができあがるには、とてつもない手間ひまと時間がかかるのは、どなたも想像できるだろう。

なんせパルミジャーノ(重さ24~40kgほど)1つを作るのには、500ℓ前後の生乳が必要なんだ。これはほぼ雌牛40頭が1日に出すミルクの総数に当たるってんだから、驚きさね。

また熟成期間も最低18カ月以上とたいへんに長い。熟成期間が長いものほど価値が上っていき――熟成の期間は2年くらいが普通だが、3年、4年のものもあり4年以上になると最高級品となり、銀行の担保になるようなチーズが出来上がるってワケさね。

このパルミジャーノ作りの作業は朝のうちと限られている。

牛が1日に搾乳される回数は2回。まず、夕方に搾った乳を大きなステンレス製のトレイに一晩寝かせ、自然に浮かんできたクリーム部分を取り除く。

その夕方のスキムミルクに、朝搾ったばかりミルクを加えて、チーズ作りをするのさ。何でそうするのか、よくわからねえが、この製法は700年以上前から伝わるやり方だそうで、設備などは近代化されても、基本的な工程はほぼ変わらないと言われている。

そして合わせたミルクを、500ℓから1000ℓ入る大釜に入れ、30℃ほどに加熱し攪拌しながら、発酵用のホエイ(乳清)を加え――さらに子牛の胃袋から採れたレンネット(酵素の一種)などを加える。

15分ほどでミルクは、カード(凝乳)とホエイ液と分離する。

こうして固まったカードを、水分を何度も出して型にはめたものを、きちんとした温度管理のもとで熟成させるんだ。

言うのは簡単だが、こいつは大変な重労働で――それが365日、1日も休まず続けられるのさ(牛さんは休んでくれねえからな)。

銀行の担保になるほどのパルミジャーノだが、あまりに原材料費と手間がかかり過ぎるんで、たいして儲けはないという。

また組合の検査に失格すると、等級を落され二束三文の値段になる。きちんと作るところでも15%は失格品が出るといわれる、そりゃあ厳しい世界なんだ。生産者は副産物でバターやリコッタチーズを作ったり、ホエイを豚のエサにして売ることで、ようやく利益を出すそうだ。

パルミジャーノのリゾットはいかが?

だが、こうやって出来上がったパルミジャーノ・レッジャーノの味は格別だ。

あらゆるパスタと相性が良いし、テーブルチーズとして、そのまま食べてもOKだ。エミリア・ロマーニャの人は、ここの特産――微発砲赤ワインのランブルスコと合わせて楽しむし、キャンティ・クラシコのようなリッチなワインでもひけをとることはない。

(スイサンドンヤ・ドットコムさんでも、ランブルスコやキャンティを扱ってるよ。構うことあないから、じゃんじゃん注文しておくれ)。

それに加えてパルミジャーノ・レッジャーノが素晴らしいのは、健康効果だ。昔から、このチーズの王様には薬効があると言われてきたが、新鮮な全乳に含まれている栄養素が、あらかた残されているのみならず、より濃縮された形でタンパク質やカルシウム、ミネラルやビタミンが豊富に入っているのさ。

もちろん消化吸収も良く、さらに殆どのチーズの中で、もっともコレステロールが低いっQてえんだから、あっしら年よりには嬉しい話さね。

そんなパルミジャーノ・レッジャーノ。あっしが一番好きな食べ方は、パルミジャーノのリゾットかな(イタリアじゃあ、リゾットにハズれなしってくらいのメニューだよ)。

それも大きくカットした、丸のままのパルミジャーノに窪みを作り、その中に熱々のリゾットを入れ、そいつを温かい皿に移して食べるのさ。(以前も紹介したが、こいつは麻布十番のピッコログランデで食べられるよ)。

こいつは、もう天にも舞い上がるばかりの美味しさだよ!

さーて、時間がきやがった。それじゃあ、お客さん。次回をお楽しみに!

ビーフのグリル、ニンジンソース

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 10 
全29話バックナンバー

1 マンマミーア・イタリアンと来たもんだ!

2 貧しさから生まれたイタリア料理

3 パスタは体に良いぜ! 

4 ショートパスタは究極の外道? 

5 体にやさしいマンマの味

6 フォアグラの道もローマに通ず

7 ちょっくらヴェネチア物語を一席

8 カルパッチオは1963年生まれ?

9 どこが違う?〜ミートソースとボロネーゼ

10 パルミジャーノはチーズ界のホンマグロでい!

11 生ハムは体に良いぜ!

12 トスカーナ〜進化した貧者の豆スープ

13 野趣溢れるイノシシはいかが?

14 永遠の都・ローマ料理って?

15 アナゴのエサになったローマの奴隷

16 宇宙に飛び立つユダヤ料理?

17 PIZZAはどこから来た?

18 世界を制覇したナポリのトマト

19 王様の舌はマカロニの舌

20 「地中海式ダイエット」はイタリアの医食同源!

21 オリーブは体に良いぜ!

22 イタリア三色国旗は健康の源

23 地中海式ダイエットって?

24 良いワインは良い血を作る!

25 シチリアの郷土料理 クスクスはいかが?

26 ゲーテも愛したシチリアの大地

27 ジェラートは一日にして成らず

28 サルディニアの珍味、ボッタルガことカラスミくん

29 アグリトゥリズモってご存じかい?

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小豆のモンブランです♪

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