永遠の都・ローマ料理って?

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 14
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これで自営業をやっている者にとって、土日というのは意外に仕事が多いもの。

サラリーマンも自営も平等に社会の一員であることには間違いなく、それは社会のカレンダーと一緒に仕事をしないといけないということです。

会社員や役所がクライアントだったりすると、どうしても原稿やラフなどを週明けに出す必要があって、仕事が土日になったりすることも少ないありません。

まあ、その代わりに平日の昼間に時間を都合できたりするわけでありますが(笑)。

というわけで、本日は「医食同源・マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ!」の14話目をUPいたします。

お楽しみくださいませ!

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 14
永遠の都・ローマ料理って?
掲載日:2004年12月28日

 まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!

いあや、今年の清水寺が選んだ漢字は「災」の字だったそうだが、あっしら食い物商売でも、少なからず台風や中越地震の影響を受けた一年だったなあ。

あっしの知り合いにも、身内に被災された方がいて、心細い年の瀬を迎えているのが、心苦しい限りさね。あっしのような爺さんに何ができるってモンじゃねえが、せいぜい、新潟の地酒や九州の焼酎などを買って、微力ながら支えになってやりてえと思うこの頃だ。

ともあれ、あっしの勘じゃあ、2005年は世の中が大きく変化する年になる気がするんだ。科学技術の面からはもちろん、政治や社会制度、学問、芸術、スポーツ――すべての分野でさ! あとになって2005年を振り返ると、この年が転換期だったと言える――そんな年になる気がするんだよ。

まあ、あっしのようなサカナ屋に何がわかるわけでもねえが、少なくとも、スイサンドンヤ・ドットコムさんの商売に関しちゃあ、そうしねえといけねえ勝負の年になるはずよ。

来年はお客さんがたに、じゃんじゃん新しい食材を仕掛けていくよ!

ともかくも、この1年、毎度有難うございやした。来年もどうぞお頼み申しあげやす・・・てなもんでえ!

永遠の都・ローマ料理って?

さて、ご好評のマンマミーア・イタリアン――この辺でちょっくら南下して、いよいよローマ料理(※1)についてお聞かせすることにいたしやしょう。

それにしても訪れた人間は大勢あれど、ローマ料理と聞いてピンとくる方がどれだけいるか――あっしら江戸っ子でも、東京料理の定番を決められぬように、歴史も人口も人種もさまざまな永遠の都・ローマの料理を、一言で語れるわけもねえ。

また、世界有数の観光地とあって、ローマっ子なら絶対行かないようなヒドい店も、ここでは数多くひしめいているのが現実だ。ババを引いちまったツーリストは、「イタリア料理など口ほどにもねえ」なんて、実に勿体ないことを言って帰る人も少なくない。

だが、ここは「すべての道はローマに続く」と言うように、イタリア料理のさまざまなエッセンスが詰まっている。

そのローマ料理ってえのが、じゃあいったいどんなモンか――今昔合わせてお聞かせすることにいたしやしょう。

※1 現在のローマは、イタリアのラツィオ州に属する1都市だが、ラツィオ料理という呼び方は一般的ではなく、通常はローマ料理、ローマ風などと言う。石川料理と言わず、金沢料理と呼ぶようなものか。

ローマの土曜はウシの日かい?

お客さんの中でもローマに行かれた方は大勢いるかと思うが、じっくりローマ料理を堪能したという人は意外に少ないと思う(もちろんイタリア料理関連の方は別だがな)。

分刻みで移動するツアーのスケジュールでは、なかなかローマの料理をじっくり味わうのは難かしいだろうし、格安ツアーの中にはパスタを50人分一度に作って出す・・・なんて乱暴な店も少なくない。

そのうえ国際都市ローマは、イタリア各地の郷土料理はもちろん、北アフリカ料理からフレンチ、寿司、ファストフードと選択肢は幅広い。東京で江戸前の料理を見つけにくいように、その事情はローマも同じだ。

ただ、何代もこの地に住むローマっ子というのは、ほかの地方のイタリア人と同じように、食に関して保守的な人が多い。

昔からローマでは木曜には「ジャガイモのニョッキ」。

金曜には「バッカラ」と呼ばれる干しダラに、「チェーチ」というメキシコ豆のスープ。

土曜は「トリッパ」という、牛の胃袋を用いた料理がテーブルにのぼる。こいつは文字通り、ローマの土曜ウシの日って寸法さ!

こうした食の法則があるのは、おそらくカトリックの総本山・バチカンの影響なんだろう。魚を食べるのは火曜と金曜(※2)と決めてる家も多いそうで、その2日しか営業しない魚屋もあるらしい。あっしらから見ると、週2日しか働かないサカナ屋なんて、とんでもねえ話だが――これもまあ、お国柄ってヤツなんだろうな~。

※2 カトリックには火曜と金曜は懺悔の夜として、獣肉を断つ習慣があるという。日本人から見ると、魚も生き物には違いないが、そのあたりは文化の違いだろう。

ヘップバーンも食べた? ローマ名物・牛の胃袋料理

土曜はトリッパ(牛の胃袋)が定番というローマっ子だが、実際にローマ料理には内臓料理が多い。これはローマ南部の下町に、大きな屠殺場があったことによるもので、今でもその周辺には内臓料理を食べさせる店が多いんだ。

牛の場合、4つ胃袋があることは知られている。

その第1~第4胃袋を順番に(日本語で)並べると、ミノ(ガツ)、ハチノス、センマイ、ギアラ(アカセンマイ)となる。その中でもローマっ子に一番好まれているのは、第2胃袋のハチノスだ。

ハチノスは日本でも、大阪は鶴橋あたりじゃあ、焼き肉屋の定番として人気の食材だが、 こいつは独特の歯ごたえが魅力だ。

中でも「トリッパのトラステヴェレ風煮込み」なんていう、イタリアントマトのモツ煮込みは有名で――日本の「煮込み」に勝るとも劣らない内臓料理の傑作さね。

こいつを作るには、まずタマネギ、ニンニク、セロリなどの香味野菜と生ハムを炒めてから、トマトソース、白ワインなどを加えて、オーブンで3時間近く加熱する。そいつに、あらかじめ食べられる固さに下ごしらえしたトリッパを加え、イタリアンパセリやペパーミントなどのハーブで仕上げるわけだ。

言うは易しだが、こいつは内臓料理ならではの、手間暇かかる一品なのさ。

出来上がったものは、臓物料理とは思えないほど上品な味わいで――うーん、「トリッパのトラステヴェレ風煮込み」なんて小洒落た名前も、うなづけるってトコさね。

ちなみにトラステヴェレというのは、昔の屠殺場近くの地名で、そばには「ローマの休日」で有名な「真実の口」がある。あっしが紅顔の美少年だった頃に、憧れだったオードリー・ヘップバーンも、この近くのモツ煮込みを食べてたのかと思うと、ちょっくら楽しくなっちまうよな~。

もちろん内臓料理ってえのは、実に体に良い。全般に低脂肪傾向だし、ビタミンやミネラルも豊富に含まれているから、もしかするとオードリーも美容のために食べていたかもしれねえなあ。

牛肉がタブーだったローマ時代

ところでイタリアで牛肉を食べるようになったのは、イタリアの歴史から見ると、実はそれほど古い話じゃない。もともとローマ人が農耕民族だったのは、以前にもお話した通りだが、その肉食の歴史をひもとくと、今とずいぶん事情が違うのがわかる。

何でも、ローマ時代には、牛を食べることは禁じられていたそうだ。これは牛は労働力だったことに加え、ミルクという貴重なタンパク源を供給してくれたためで、やたらに牛を殺せば死刑になるという厳しい法律もあったらしい。

食べて良い牛は、年をとって働けなくなった牛か、生まれ過ぎて処分することになった仔牛に限られていた。

牛が食べられるようになったのは、ローマ帝国が崩壊したあとに、北の蛮族ゴート人やロンゴバルド人が侵入してきてから以降のことで――中世以降の話なんだそうだ。

それどころか、トスカーナの倹約料理を見てもわかるように、イタリアが最近まで貧しかったことを考えると、今のような肉中心の食生活は第二次世界大戦以降といえるかもしれねえな。

ところで現在のイタリア人は、日常的に牛肉を食べるかわりに、脂の部分は避ける傾向がある。カロリーが高く、しかも豚などに比べて燃焼されにくい牛の脂を、毎日摂取していたら、健康に良くないこともあるんだろう。

こちらは霜降り神戸牛です♪

連中は日本人の好きな霜降り肉はあまり喜ばないそうで、ステーキも脂の部分は外すとか――カロリーが低く、消化にも良い仔牛を好んで食べる。前回、ご紹介したフィレンツェ風ビフテキに使うキアニーナ牛にしても、でかいことはでかいが、生後14~18か月の仔牛だということが、現在の彼らの嗜好を物語っているわけさ。

ローマ時代の北京ダック・オオヤマネ

肉食に関するイタリアの歴史をひもとくと、今とずいぶん嗜好が違う。中心だったのは豚肉や羊肉で――以前にもお話した通り、生ハム類なんぞは、紀元前からその原型があったくらいだ。

アピキウスなんてローマ時代の美食家が残したレシピを読むと、ローマ時代に人気だった食材で、現在は食されてないものも少なくない。

シカや野ウサギ、イノシシやキジなどは、ジビエ料理として、現在でも食べられているが、フラミンゴやダチョウ、クジャク、ツルやインコなど、現在では殆ど馴染みのない肉類も、そのレシピには残されてる(もっとも最近じゃ、ダチョウを飼育している畜産家もいるそうだがね)。

また、今ではまったく名前も聞かれない食材に「オオヤマネ」がある。

何だそりゃ? なんて言わないどおくれよ。あっしだって、最近はじめて知ったんだ。

なんでもオオヤマネ(イタリア語でギーリ)ってえのは、リスとかネズミと同じげっ歯類で、大きさも姿も両方をかけ合わせたような動物だ。

ローマ時代の最盛期には、このネズミリスくん専用の飼育場を作り、商売にしていた貴族も多かったそうだ。

オオヤマネは食べる直前、冬眠直前の習性を利用して、専用の瓶にぶち込んでおく。そして運動をさせずに、クルミやドングリのようにカロリーの高いものを与えて太らせるのさ。こいつはフォアグラとか北京ダックと同じ理屈だが、いやはや人間ってえのはひでえことしやがるもんさね~。

ローマ時代に、オオヤマネの肉は松の実やケシの実、ハチミツなどと一緒にすり潰され、豚の腸などの中に詰められ、調理されていたそうだ。今ではその味を知る人はほとんどいないが、こいつは中世の頃まで食べられていた美味なる食材だったそうだよ。

え? そんなに旨いなら、うちで飼育して売り出したいって?

お客さん、そいつはやめときな。

オオヤマネは見かけがけっこう可愛らしいんだ。食材にしたら、反感買うに決まってるよ。それよか、あっしらがいくらでも旨いモン提供するから、仕入れの方に専念しなって。

さーて、時間がきやがった。それじゃお客さん! 良いお年を!

来年もどうぞ、ご贔屓のほどをお願いいたしやす。

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