シチリアの郷土料理 クスクスはいかが?

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 25

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本日は約1ヶ月ぶりの「医食同源・マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ!」のUPです。全29エピソードのうちの25話め、北からだんだん南下していよいよ今回はシチリアの特集です。

どうぞお楽しみのホドを!

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 25
シチリアの郷土料理 クスクスはいかが?
掲載日:2005年6月8日

 まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!

6月を迎えて、そろそろ東京も新緑から梅雨どきに移りかわる季節だが、お客さんがたはいかがお過ごしかな? あっしといえば、インドの取引先の友だちが訪ねてきて、しばらく滞在してもらったところだ。インドのエビは、うちでも取り引きが増えているもんでね~。

もっとも今回は仕事じゃなく、プライベートな観光で来てもらい、京都・奈良はもちろん、日光や金沢、鎌倉といった古都を案内し、新緑の季節を堪能してもらったところさね。なんせインドじゃあ、今時分が最も暑い季節で連日40度を超える猛暑――学校も5月6月に夏休みとくるんだから、大変なこった。お国事情ってえのはずいぶん違うもんさね。

ところで、そのインド人にどこが一番良かったか聞いたら、思った通り「日光」だと答えやがった。やっぱり外国人には日光なのか、東照宮のあのド派手さが良いらしい。東照宮を堪能したあと、あっしが用意した旅館で、スイサンドンヤ・ドットコムさんのエビやイカを、野郎、嬉しそうに「オイシイ、オイシイ」と舌鼓を打っていやがった。

まあ、旨いもんは、誰が食べたって旨いモンだけど――あっしも自分の仕入れが、世界の誰にでも「旨い」と言わせる食材と、自信のほどを深めたわけさね。

歴史に揉まれたしぶとい連中

 さて、このマンマミーア・イタリアンも、いよいよ南下してきたが、今回はつま先を超えた南の島・シチリアの料理を取り上げて、お話をいたしやしょう。

地図を見ていただければわかるように、このシチリアって島は、イタリア半島の長靴にポーンと蹴飛ばされたように浮かんでいる。

地中海のほぼ中心に位置し、海洋交通の要衝にあたるこの地形を見れば、誰でも想像がつくだろう――およそシチリアくらい、さまざまな民族の支配を受けた場所はない。紀元前5世紀に古代ギリシャの衛星都市として発展して以来、シチリアが他民族の支配を受けなかった時期はなかったんだ。

ギリシャ、フェニキア(※1)、カルタゴ(※2)、ローマ、アラブ、ノルマン(※3)、ビザンチン(※4)。はてまたフランスやスペイン、ドイツなど、いちいち上げていたらキリがない。

1859年にガリバルディがイタリアを統一し、イタリアの特別州となるまで、シチリアにはさまざまな支配者が、入れかわり立ちかわり、やって来ては去っていったのさ。

だが、どんな野郎が入ってきたところで、そいつらは何時までもいやしねえ。いつかは出て行くハメになる・・・。

ずっと島で変わらず生きていくのは、自分たちシチリア人だってことを、連中は歴史を通じて知っていたんだな。その結果、シチリア人が身につけたのは、逆境に強く、頑固でしたたかな性質だったのさ。

歴史に揉まれたしぶといシチリア人――いったいそんな連中が何を食べてきたのか・・・ちょっくら覗いてご覧にいれやしょう。

※1 現在の中東、レバノンの周辺

※2 北アフリカのチュニジア

※3 北欧デンマークの周辺

※4 現在のトルコで、昔の東ローマ帝国にあたる

 

意外に豊かなシチリアの大地

「地中海文明の十字路」とも呼ばれるシチリアだが――なぜそれだけ多くの民族や国家の支配を受けたといえば、地勢的な理由以外に、この地が意外に豊かだったことがある。

とかくシチリアというと、南北イタリアの格差を代表で、貧しさからマフィアが生まれたといったイメージが強い。また実際に現地へ行ってみると、どこまでもゴツゴツした茶色く無骨な大地が広がっており、一見すると不毛の大地に思われがちだ。

ところがどうして、それは夏の酷暑期だけの話。

冬でも温暖なシチリアは、オレンジやレモンのような柑橘類をはじめ、ブドウ、オリーブ、アーモンド、パスタの原料になるデュラム小麦など、今も昔も豊かな穀倉地であり、農業地帯だったんだ。シチリアはローマ時代から続く、巨大な食料の供給源であり、ローマとカルタゴがこの地をめぐって何度も争った歴史があるほどだ。

また四方を海に囲まれているから、マグロでも伊勢エビでもイワシでも、豊富な海の幸が穫れる。家畜の飼料になる牧草にはこと欠かないので、良い肉も食べられる。

そしてシチリアが生み出す良質の塩(岩塩の海の塩も採れる)、インドやアラブから運ばれてくるスパイスの数々は、富を生み出す、打ち出の小槌だったというわけだ。

だから酒でも穀物でも、槍でも刀でも鉄砲でも・・・「七人の侍」の農民じゃないけど、連中、板の間ひっぺがせば何だってある。ない、ないと言いながら、何だって持っていたというワケさね。

その辺がシチリア人のしたたかさでもあるわけだが――一方で支配する側も一筋縄でいかぬもの。連中が意外に持っているのを、見逃さなかったって寸法さ。

それが、この島の悲劇だったワケだな。

余談ながらマフィアの話

余談になるが、ここでちょっくら、シチリアで最も有名な負の特産物――マフィアの話をいたししょう。

シチリア人がしたたかとは言っても、それは旨い汁を吸ってきた連中の話だ。貧しい小作人の暮らしは、そりゃあ悲惨だったんだ。

シチリアも2500年前、ギリシャの衛星都市として発展した時期は比較的平和だったが、やがてローマやらアラブに牛耳られるうち、雲行きがあやしくなってきた。

中でもひどかった時代が、13~19世紀頃のスペイン・アラゴン王国の支配で、この時代のシチリア農民は厳しい年貢の取り立てに、それはそれは苦しんでいたらしい。

それが19世紀になって、スペインの王国が崩壊する時に登場したのが、マフィアだと言われている。こう言うと、みなさんの中には、スペインの圧政に対抗するためにマフィアが生まれた――なんて話を期待するかもしれないが、実際はそんな生やさしいモンじゃなかったようだ。

当時スペイン王国の下、土地ごとにシチリア人の領主がいて、それぞれ小作人たちから重い年貢を徴収していた。ところが強権的な王国が消えることで、領主たちはただの地主になり、税の徴収が簡単に行かなくなる。

そこで困った地主(元領主)は、ガペロットという農地管理人を代理にたて、厳しい搾取を行うことにした。そのガペロットが犯罪組織へと変わったものが、マフィアの原型と言われているんだ。今でいえば、サラ金の取立てがマフィアの前身だといえば、わかりやすいかもしれねえなあ。

ただ、マフィアの起源には諸説ある。

有名なものとしては、シチリアの晩祷(ばんとう)と呼ばれる事件が、起源という説がある。これは12世紀、フランス・アンジュー家圧政の時代――フランス兵の一団がパレルモでシチリア住民の女性に手を出したことに怒った住民が暴徒化した事件だ。

叛乱の合言葉、Morte alla Francia Italia anela(全てのフランス人に死を、これはイタリアの叫び)の頭文字を並べるとmafiaとなり、これがマフィアの名前の由来であるというんだ。だが、これもやはり出来過ぎた話で、少々格好が良すぎる感じだな。それに、この説は時代的に古すぎることもあり、あっしは眉唾もんだと考えているけどね。

シチリアの郷土料理、クスクスはいかが?

さて、そんなシチリアの料理の特徴といえば、野趣あふれる強くスパイシーな味覚だろう。さまざまな民族の文化が混在するシチリア料理だが、その中でもアラブの影響が色濃いことは有名だ。

以前にも申し上げた「乾燥パスタ」はアラブ人がシチリア経由で持ち込み、イタリア全土に広がったものだが、同じ原料を使う食材にクスクスがある。

クスクスというのは、荒挽きのセモリナ粉に少量の塩を入れ、サフランを溶かしたお湯を混ぜて粒状のパスタにしたもので、モロッコやチュニジアなど、北アフリカを中心に食べられている料理だ。パスタと違うのは、茹でるのではなく蒸して食べること(※7)。北アフリカを植民地にしていた関係で、フランスではよく食べられる食材だが、イタリアではシチリア――それもアラブ文化圏(※6)の西部、トラパーニの料理として知られている。

アラブ(フランスも)では羊や鶏の煮込みを添えるのにくらべ、シチリアのトラパーニでは魚介類が中心だ。エビやイカ、アサリや白身魚をペスカトーラ風のトマトソースで仕上げ、それを蒸し上がったクスクスにまぶして食べるんだ。

リゾットより胃に軽く、粘り気もなくサラサラしているので、なかなか食べやすいもんだよ。こいつを青い空の下で、白ワインと一緒にキューっとやるってえと、なかなかの心持ちさね。デュラム小麦にトマト、魚介類にワインと、地中海式ダイエットのメニューに加えている料理本も多く、まさに寿命が伸びること受合いだね~。

※6 東部はギリシャ文化圏

※7 日本でも乾燥クスクスは、イタリアやエスニック食材の店で売られている。ただし、茹でて食べるようになっている。

 

スイサンドンヤさんのマグロはいかが?

シチリアのトラパーニといえば、実はあっしらの商売じゃあ、ちょっくら知られたところだ。なにって、そいつはマグロ漁に決まってるさね。

シチリアには「マッタンツァ」と呼ばれる、世界的に有名なマグロの漁法がある。こいつは、マグロの求愛時期に合わせた5月半ばから1ヵ月程行われるだけなんだが――定置網を利用してマグロを呼び込み、暴れるマグロさまを棒で一撃を加え、一気に引き上げるという漁法だ。

トラパーニは起源前8世紀くらいに、フェニキア人が港を開いたという古い港町だが、この漁法も1000年以上歴史があるといわれる、由緒正しい漁なのさ。

あっしも何度か見たことがあるが、それは勇壮なもんで、漁というよりは祭りのような感じがした記憶がある。

また、このあたりは畜養も盛んな場所で、世界のマグロ業者が集まる地でもある。

スイサンドンヤさんの本マグロは、地中海産を中心にお売りしているけど(特にトラパーニ産というわけではないけどね)、こいつは大層な逸品で、寿司にしてよし! 刺身にしてよし! どこに出しても恥かしくねえ立派なマグロさまだ。おひとつ試しておくんなせえ。

さーて、時間が来やがった。

じゃあ、お客さん。次回をお楽しみに!

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