シエスタおじさんの部屋

青空に浮かぶその人はすべてを知っている


 神か それとも幻か?

おーい シエスタおじさん
ねてばかりいないで 早く来てくれよー

みんな覚えているかい?
あのシエスタおじさんのことを……
いつの頃だったかは忘れてしまったけど
世界中の空に姿を現わした
あのシエスタおじさんのことさ

あのおじさんは まだ空にいるのだろうか?


STORY 

数世紀にもわたって
どこからともなく世界中の空に姿をあらわす「シエスタおじさん」
それは如何なる時でも起きることなく シエスタ(昼寝)を続けながら
大気に浮かぶ不思議なおじさんだ

シエスタおじさんは 天体の運行に合わせて動くと言われ・・
戦地に浮かび上がり 激しく飛び回る時は
世は決まって乱れ 恐ろしいことが起りはじめるという

そんなシエスタおじさんの現れるところ
約束の地を求めて少年アチャールが旅をする物語

そしてたどり着いた先には?


 「あ、ヤマアラシ! あれ、もしかするシエスタおじさん?」
「ほう、しばらく見かけないと思ったが、こんな所に現われるとはな」


「起きてよ、おじさん! 目覚めて、この世界を変えてくれよ!」


  そのサンタクロースはトナカイでなくロバに乗っていた。

(中略)

人を寄せつけない“マーケット※”に、何でサンタクロースがいるのか……

それとも、もうこの森は“マーケット”じゃあないのか?
ぼくはわけがわからなくなってしまった。
「ねえ……あなたはサンタクロースなの?」

※この物語で言う”マーケット”とは過去に、大きな何かの力が加わって根こそぎ人がいなくなってしまった荒れ放題の草むらを指す。その大きな力によって自分の意思を得た”マーケット”は、二度と人を受け入れない土地になってしまった。奥地には王座と言われる場所があり、到達すれば何でも願いが叶うと言われているが、ひとたび”マーケット”に拒まれると二度と戻ることはできない。


  シエスタおじさんは
こちらの世界でもときどき現われる
ときどきね

私がはじめてシエスタおじさんを見たのは
まだ神父になる前のことだった
当時私はまだ十八歳で 志願兵としてクリミア半島に出兵したんだ

 

戦いが激しくなってからというもの
シエスタおじさんは ずうと激しく回転しつづけていた
8の字回転はもちろん 風車のように回転したり
ある時は鳥の群れと一緒に空を飛んだりと 妙な動きをつづけていたんだ

 


風を見ることはできないけど
風車を建てれば
風の通り道と 風の力を知ることができる

 重力は見ることはできないが
リンゴが落ちるのを見れば その存在を知ることができる

磁力を見ることはできないが
羅針盤が動くのを見れば 磁力があることがわかるだろ?

「このロバはファティマ
名前を呼んであげれば 何でもいうことを聞くはずだ
それから これは二週間分の乾燥パンだ
大切に食べるんだよ」

「ありがとうパドーレ」

「さあ 行きなさい アチャール
シエスタおじさんを見失わないように歩いていきなさい
きっとあなたにも神さまのご加護があるだろう」

さあファティマ 渡れそうな場所を 探そう

 


シエスタおじさんは
力士たちとウランバーナの町を祝福するように
大仏さまの頭上に浮かんでいた

「ソーレ! 五穀豊穣を祈願して」
「ソーレ! 天下泰平を祈願して」
「鎮まれ大地の悪霊よ!」
「来たれ大地の精霊よ!」
 

そして力士たちは いっせいに足ぶみをはじめた


さあ 来なさい アチャール
まず大仏さまの胎内に案内しよう
 


やがて数十億年が経ち 原初の物質が形づくられ
あちらこちらに銀河の小島が浮かぶようになった

そう、まるでシエスタおじさんが 何人もあちこちに浮かんでいるようにね


「宇宙が爆発して以来
重力はもっとも古い力のひとつなんだ」

ヨーヨーは おだやかに浮かぶシエスタおじさんを眺めそうつぶやいた
 


韓国版 シエスタおじさん
韓良心 訳

こちらの方がカラーページが多いですが
残念ながらまったく読めません

このhpではコリア版に使用したカラー版をいくつか入れてますので
日本語版ではモノクロになっているものもあります


最初の「シエスタおじさん」
この本を読んだ方からは「シエスタおじさんは何者ですか?」
「神さまみたいなものですか?」と よく聞かれました 
一旦作者の手を離れた段階で作品は 一人歩きしますから
どのように捉えようと 読んだ人が自由に考えてかまわないのですが
あえてわたしの考えを申し上げると 
「シエスタおじさん」は世の中や天体の動きと一緒に移り変わっていく
浮遊物体 浮遊人物です

 シエスタおじさんを思いついたのは25年ほど前

学生時代 はじめてスペインを旅した時
公園で
何もせず昼寝(siesta)をするおじさんを見て
絵を描いたのが最初のシエスタおじさん」です

そう
はじめシエスタおじさんは
ラテン諸国など 暑い地域にはどこにでも見られる
単なるお昼寝おじさんでした

その正体は誰も知らない
しかし ある時シエスタおじさんは ふとしたことで宇宙と一体化し
あらゆる空間をくぐり抜けて世界中に現れる存在になったのです

 シエスタおじさんはたぶん 起きることはありません
文字通り いつもシエスタをしながら空中を漂っています

  


シエスタおじさん 最初のお話

 

 

 

つづく