幸福を呼ぶジェラート

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 27
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別のエピソードは医食同源で HOME

こちらはジェラートではなく、熊谷のかき氷です♪

さて、今日はまた作品UPをしようかなと思っていたところ、ふと「医食同源・マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ!」がしばらくUPされてないことを思い出しました。

で、自分のブログを検索してみると、何と昨年9月6日以来UPされてないではありませんか。

そーなんだよね。
元原稿貼付けるだけなんだけど、レイアウトしたり写真入れたりするのに意外に手間ひまかかるのです。

しかも、本日UPする話はジェラートやて。
真冬にジェラートと思いましたけど、食べる人は1年中食べますから、思い切ってUPします。お楽しみくださいませ!

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 27
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掲載日:2005年7月6日 

まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!

梅雨どきなんて言いながら、こないだ東京じゃあ36.2度とか、6月としちゃ観測史上最高の気温を記録したそうさね。暑い暑いとは思ったけど、いきなり体温と同じ気温となると、お年寄りにはコタえる陽気だよ。

また西日本のお客さんがたには、このカラ梅雨で水不足が懸念されるこの頃だ。

なに、ゲンさんも還暦を越えたお年寄りだから、この季節のはコタえるだろうって?

バカも休み休みお言いよ、お客さん。

はばかりながら、このイダテンのゲンさん。40年間、魚河岸の看板を支えてきた男だよ。このくらいの暑さにネを上げるようじゃあ、みなさまに元気を差し上げるような食材は、とてもとても調達できるわけないだろう。

ともかくも体調管理の難かしい季節。休養も仕事のうちってなモンで――みなさん、どうぞ無理なさらねえで、旨いもんをたんと食べておくんなせえ。

夏の「お試しキャンペーン&特売セール」はまだまだ続くし、 新鮮で旨い食材は、このイダテンのゲンさんが腕にヨリをかけて集めてくるからよ。どうか、この時期――スイサンドンヤさんの食材で乗り切っておくれよ!

ジェラートは1日にして成らず

さて、今回のマンマミーア・イタリアン。前回に続いてシチリアの話だが、今回はちょっくら趣向を変えてイタリアのデザート、ドルチェとやらを取り上げよう。

えっ。イダテンのゲンさんが、甘いもん食べるのかって?

そのゴマ塩頭とハチマキに、ドルチェなんて似合わねえだって?

どうも、みなさん。文字通りの大甘野郎だね~。あっしが大酒飲みなもんで、甘いものは食べないと思ってるようだが、ところがどっこい――このイダテンのゲンさん。実は大福&お汁粉に日本酒、ワインにチョコレートと、酸いも甘いも、苦いもしょっぱいも、何でもござれの甘党なんだ。

スイサンドンヤ・ドットコムさんでもケーキ類を扱っているもんで、前から甘味を取り上げてみたいと思っていたもんで、今回は良い機会ってわけだ。

もっとも、ドルチェにしても、ヨーロッパ菓子というのは奥が深く、とても1回や2回じゃあ、語りつけせない。ドルチェを含めた甘味全般は、いつかまとめて特集をすることにして、今回は、季節がらアイスクリーム・・・イタリアではジェラート(単数形はgelati)と呼ばれる、世界中の誰もが好きなドルチェを中心に、ちょっくらお話しいたしやしょう。

中でもシチリアは、イタリアの中でもジェラートの本場とされる土地――今日は、この甘くて美味しい究極のデザートを堪能していただきやしょう。

ジェラートが先か? アイスクリームが先か?

おっと、いけねえ。

今、あっしは「アイスクリームは、イタリアではジェラートと呼ばれている」――なんて言ったけど、実はその表現は正確じゃない。

たしかにアイスクリームとジェラートで、製法や味が違うことはもちろんだが――それ以前に、歴史的に見れば「ジェラートは世界に広がり、アイスクリームになった」という言い方が、正しいのさ。

なぜなら、実は現在のアイスクリームのルーツってえのは、今から700年ほど前のシチリアにあるからなんだ。つまりイタリアのジェラートから、現在、世界で食べられているアイスクリームに変化し、発達していったってワケだ。

もちろん氷菓の類ってえのは、そのはるか昔からあった。山から運んだ氷を洞窟に保存し、夏の暑い時期に、ハチミツや樹液と混ぜて楽しむというのは、昔の権力者なら、みなやってきたことなんだ。

かのアレキサンダー大王(BC356~BC323)などは、エジプト遠征の際、自分で楽しむのを二の次に、雪をかぶせた冷たい飲み物を、兵士たちに飲ませて士気を高めたなんて話がある。また一方で、古代ローマの暴君ネロ(AD37~AD68)もアルプスの万年雪をローマまで運ばせ、それにハチミツやバラの果汁、フルーツなどを混ぜて(※1)愛飲していたそうだ。

それにしても甘味が貴重だった上、冷蔵庫もなかった時代に、誰もが真夏に氷菓を手軽に食べられたはずはない。

それを大きくそれを変えたのが、砂糖の伝来だ。

シチリアってとこは、インドからヨーロッパへはじめて砂糖が伝わった地であり、アラブ世界を通じて、さまざまな食材や文化がやってきた場所でもある。

インドを出発したサトウキビは、ペルシャからメソポタミアをわたり、地中海を通じてシチリア島に辿りついた。そして13世紀半ばには、パレルモ周辺に地中海最大の甘蔗(かんしゃ/サトウキビのこと)農場を有するようになったんだ。

現在のイタリア料理では、味付けにほとんど甘味を入れないが、シチリア料理だけはコクづけに砂糖を使う。それには、そんな歴史的背景もあるわけさ。

※1 この飲み物はドルチェ・ヴィータ(dorce vita)と呼ばれた。イタリア語で「甘い生活」を意味する。フェリーニ監督の名作「甘い生活」も、原題は同じ”Dorce Vita”。

アラビアのジェラート

それ以前――11世紀頃のアラブ世界には、ジェラートの原型になった「シャルバート」という氷菓があった。名前を聞いて想像がつくように、こいつはシャーベットやシロップの語源になったアラビア語で、「飲む」という動詞のシャリバが変化したものらしい。

今でもイタリアじゃあ、シャーベットを「ソルベット」と呼ぶが、その言葉もシャルバートから来ているってわけだ。

これは、バラや麝香(じゃこう)で香味をつけた砂糖水を、山の氷などで冷やしたもので、もっぱら病後や疲労回復のために飲まれていた。

あの「アラビアンナイト」の中でも、語り部のシェラザード姫と不眠症の王様が、しばしばシャルバートを口にする場面が出てくるんだが、おそらくは当時身分の高い人は、たびたび口にして飲み物だったのだろう。

今でもイスラム圏でシャルバートは、断食のラマダン時期、日の入りとともに1日の乾きを潤す飲み物として欠かせないという。

さて、そんなアラブの清涼飲料水シャルバートがシチリアに渡った時、レシピにちょっとした工夫がなされた。

それは果汁やワインに砂糖やハチミツを混ぜ、バラなどで香りづけをしたシャルバートを卵の殻に入れ、標高3340mのエトナ火山の万年雪で凍結させるという方法だ。凍ったシャルバートの入った卵は、藁で保温されてパレルモまで運ばれて行ったって寸法さ。

こいつがジェラートの起源と言われている。

もっともこのレシピでできる氷菓は、氷の粒がプチプチして、今でいうとジェラートというよりは、「グラニータ」(※2)に近いものだそうだが、こいつが当時、たいそうな人気だったことは間違いないだろうな~。

※2 水と砂糖とレモンの絞り汁を基本に作る、フラッペの一種でシチリア名物のひとつ。凍る直前に、何度もかき混ぜる作業をくりかえすので、氷の粒が砂のように細かいのが特徴。

シチリア名物カッサータはいかが?

もうひとつ、シチリア名物の氷菓のひとつに「カッサータ」がある。

当時、11世紀末から13世紀末頃にかけて、十字軍の遠征がなされた一方で、貿易商人たちは、ちゃっかりアラブ世界と交易をしていた。

おかげで両方のルートから、アルメニアの干しアンズや、シリアのレーズンなどのドライフルーツ。レモンの砂糖漬けのレモンピール。ザクロやオレンジ、イチジク、桃、サクランボにピスタチオ、アーモンド、などなど・・・さまざまな食材がシチリア経由でヨーロッパ社会に入ってきたんだ。

こうしたアラブ・サラセン文化のもと、シチリアで創作されたドルチェがカッサータだ。

こいつはチーズ風味のジェラートをベースに、中に砂糖漬けのフルーツやナッツ類をふんだんに練り込んだもの。アラビア語のカサー(大きな深いボール)を語源とするように、大きなドーム型に入れて冷やすのが特徴だ。

日本でも鹿児島には、練乳をベースにフルーツをまぶした「シロクマ」と呼ばれるアイスクリームがあるが、傾向としては、ややカッサータに近いものがある(歴史はカッサータの方がはるかに古いがね)。

最近じゃあ、シロクマはコンビニに置いてあるし――カッサータは、ちょいとしたイタ飯屋で食べられる。夏に向うこの時期、どちらかお試してになってはいかがかな。

幸福を呼ぶジェラート

16世紀になってジェラートは飛躍的に進化する。アントニウス・ジマラという、パドヴァ大学の教授(※4)が、黒色火薬などに用いる硝石を水に入れると、冷却作用があることを発見したんだ。この冷却技術のおかげでバリエーションが一気に広がり、後に泡立てた卵白や生クリームも加えられるようになったワケさね。

この頃になると、ジェラートはシチリアだけでなく、ナポリやフィレンツェ、ヴェネチアなど、イタリア全土に広がり、さらにはフランスやドイツなどへ渡っていった。

そんなワケか、イタリアのジェラートには、2つの大きな流派がある。

1つはもちろんシチリア式のジェラートで、こいつは低脂肪で、空気の泡の入りが少なく固いのが特徴だ。

もう1つはヴェネチア式のジェラートで、こいつは脂肪分が多く、空気の泡の入りが多いクリーミーなものだ。牛乳を原料にした日本のソフトクリームは、どちらかというとヴェネチアのものに近い。

シチリアのジェラートの特徴ってえのは、ともかくも固いのに美味しいことだろう。切ってもなかなか落ちないし、溶けにくく粘り強いんだ(何でも、シチリアのジェラートは、天然の海草を使った、ゼラチン質の食材を練り込んであるらしい)。

脂肪分が少ないので、ヘルシーということに加え、シチリアの豊かな果物類が豊富に練り込まれているのが、何と言っても魅力だな~。

特にリモーネ(レモン)やブラッド・オレンジのような柑橘類は、ほかには比べようのない香りがして、本当に美味しい!

ほかにもフラゴーラ(イチゴ)や、アナナス(パイナップル)、ミックスベリーにチョコレート、ヘーゼルナッツ、イチジクに洋梨・・・おあああ、考えるだけで、よ、よだれが!

イタリアでは、マフィアのドン風のコワもてオヤジも、ジェラートを食べる時は幸せそうに目を細める(まあ、そいつはあっし、イダテンのゲンさんも同じことだがね)。

ともかくも、ジェラート抜きでイタリアの食を語れないというのが、あっしの考えだ。

暑くなるこれからの季節、イタリアン・ジェラートで夏を乗り切ってみては、いかがかい?

さーて、時間が来やがった。
それじゃ、お客さん。次回をお楽しみに!

※4 北部イタリア、ヴェネチア近郊にある世界最古の大学。かのガリレオ・ガリレイもここで教鞭をとっていた。

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