サルディニアの珍味、カラスミくん

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 28
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別のエピソードは医食同源で HOME

本日は久々に「医食同源・ マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ!」の28回目。イタリアンの連載はあと1回を残すところとなりました。

今回はイタリアのリゾート地として知られるサルディニア。
ガガさまをモデルにした上の絵「コスタ・スメラルダの奇跡」も、サルディニアのロケーションを描いたもの。

ところが意外にもサルディニアの郷土料理は山岳料理なんですね。
というわけで、詳細は記事をお読みくださいませ!

お楽しみを♪

マンマミーア・イタリアンーと来たもんだ! 28
サルディニアの珍味、カラスミくん
掲載日:2005年7月20日

まいど、まいど、イダテンのゲンさんです!

いやはや、先日ロンドンで起こった同時多発テロには驚いたなあ。びっくりしたと同時に、あっしは怒りが込み上げてきたぜ! あんな連中、野放しにしてちゃいけねえってな。

あっしの娘の友だちはロンドンに暮らしてるもんで、ちょっくら心配したけどな(もちろん無事だったがね)。

ともかくも亡くなられた方には、心よりご冥福を祈る次第で・・・。

ロンドンとは直接の取り引きがあるわけじゃねえが――こちとら商売は、世界中に買い出しに行くもんで、まったくもって人ごとじゃない。

あっしらサカナ屋さんたちが赴くところは、インドネシアやフィリピン、インド、パキスタン、モロッコ、南アフリカなど、場所によっては安全とは言えない国も多い。

だが、テロリストに屈しているようじゃ、一人前のサカナ屋とは言えねえよ。危険なところにわざわざ行くことはないが、万全の安全策をとりながら、世界各国から旨いモンをかき集めている次第さ。

まあ苦労して集めてきた食材のおかげで、先週、有明で行われたシーフードショーも大盛況。世界各国から運んできた海のモンを、お客さんがたは「旨え、旨え」って食べてくださったよ。

ともかくも体調を崩しやすいこの時期だ。みなさん、どうぞスイサンドンヤ・ドットコムさんの食材で乗り切っておくれよ!

イタリア人が一番好きなイタリア

さて、ご好評をいただいていたマンマミーア・イタリアンも、残すところ今回を入れて、あと2回。しんがりはサルディニア島を取り上げてみやしょう。

サルディニアと言われても、日本人にはピンとこない方が多いと思うが、実はこの島――イタリア人の多くが、イタリアで最も素晴らしい土地と賞賛されてやまない別天地なんだ。

世界一ツーリストの多い国・イタリアにおいて、なぜ本国の人々から、そこまで人気を集めているのか? その理由はこの島の持つ美しい自然にある。

現在、島の東北部に当たる、コスタ・スメラルダ(エメラルド海岸)には、夏ともなると、世界中の大富豪がバカンスに集まってくる。あの故ダイアナさんも愛したという、紺碧の海に青い空。白く輝く砂浜。珊瑚がつらなる岩礁。

そして内陸に入れば、アグリツゥリズモに代表される農場の数々。点在する地中海の灌木、深い森・・・それがサルディニアなのさ。

今回はそんな、豊かな自然に溢れるイタリア最後の秘境――サルディニアの食をとことん食べつくしてみやしょう!

サルディニア人は山の民だった?

サルディニア島の歴史はすこぶる古い。数1000年の歴史を持つことはわかっていたが、最近になって、15万年前の人骨と黒曜石が確認されたという。

ただ、この島の魅力が何であるかと言えば、歴史と言うよりは、その風光明媚な自然に尽きるわけだ。この地がリゾート地として注目されたのは、ごく最近の話で、それまでサルディニアは辺境の島とされ、住民たちも至極貧しい暮らしをしていた。

なんせ、昔のサルディニア人は海のそばには住まなかった。なぜって、常に外敵が襲来してくるからさね。

シチリアのように禿げ山ばかりが目立つ島と違って、魔物の出そうな森に囲まれたサルディニア内陸部は、侵略者を寄せつけない天然の要害だったワケだ。

シチリアが幾度となく異民族の支配を受けてきたのに対して、サルディニアを完全に制圧した支配者はいなかったのは、ひとえにこの山がちな地形によるものだ。

そのためか、サルディニア人は何かに警戒しているかのように眼光が鋭く、髪も黒く、背も低く――何やらアラブ系や東洋の血が混じっている感じだ。ともかくも、お調子ものな本土のイタリア人とは、まったく違う人種だね。

島全体の9割を占める内陸部の町に、ヌオーロという代表的な山岳都市がある。

その辺はラ・バルバージア(野蛮人の地)と呼ばれる強者ばかりが暮らすところだったそうだ。周囲は標高2000m級の山岳に囲まれた深い森で、未だに外部の人間の侵入を拒ばんている。森を抜けるとさらにマキスと呼ばれる荒れ地が広がっており、ここは伝統的に島の掟を破ったものが逃げ込んできたそうだから、昔は禁じられた土地だったんだろうな。

サルディニア内陸にはそんな土地があちこちに点在しているんだが、当然ながら、そんな山の民が海のものを食べられたハズはない。サルディニア伝統料理に肉が多いのは、そんなわけなのさ。

余談ながら、島にはヌラーゲと呼ばれる、有史以前に建造された石の砦が7000ほど点在している。これは、宮崎駿の「天空の城ラピュタ」のモデルになった遺跡とかで、いわば石器時代からある要塞だな。

これらヌラーゲを見ると、まあサルディニア人ってえのはずいぶん昔から、侵略者と戦い続けてきたんだなあと、感心する次第さね。

サルディニア、羊飼いの料理

サルディニア料理は羊飼いの料理と、漁師の料理に分かれている。

山あいの地というのは、どうしてもタンパク質が足りなくなる傾向にあり、日本でも長野あたりじゃ、ハチノコやイナゴ、ザザムシなんて珍味をいただく。

羊飼いの主なタンパク源といえば、何と言っても羊の乳から作ったペコリーノ・チーズだが、祝いの日にはご馳走として肉を食べた。それもさまざま肉を食べる。豚や牛、羊はもちろん、馬やロバ、シカやウサギといった野禽類、そして内臓料理など、貴重な肉はムダなく食べたんだな。

ただ、こういった羊飼いの料理ってえのは、日本人にはちょっくらキツい。

あっしは、サルディニアの州都カリアリで、ス・クンビドゥ(Su Cunbidu)という

サルディニアの伝統料理を出す店に入ったことがある。洒落た店内で、フィガロ・ジャポンとやらにも掲載された地元の名店だそうで・・・そこで、おまかせのコースを頼んだんだが、このゴマ塩アタマのジイさんにゃあ、どうにもキツかったなあ。

どうキツかったかって――本格的な郷土料理が、よそものにとってキツいもんだが、まあ肉のクセとにおい、そして出された量が凄かったってことかな~。

特にセコンド・ピアットに出されたグラン・プレミオ(※1)と呼ばれる、馬の骨つきステーキなんか、あまりに肉の匂いそのままだったのさ。さくら肉も馬刺で食べたり、タルタルステーキで食べる分には、さっぱりしていて美味しいが、どうも焼いたりすると肉のにおいがかえって強調されるのかもしれない。

おまけに血合い部分の骨付き肉となりゃあ、なおさらさね。味つけも塩胡椒のみとシンプルだが、ちょっと日本人にはつらい肉料理だったな~。

ほかにもサルディニアの山岳料理には、乳ばなれする直前の仔豚を野焼きしたポルチェドォ(porceddu)というものがある。ネズやオリーブの木の薪を燃やし、半身に切った豚を大きな串に刺して、火のまわりに立てて食べるのがサルディニア風だ。

ネズの木は松に似た針葉樹で、ジンの香りづけのこの実を使う。針葉樹はヤニ成分が多いので、燻製などには避けられる素材だが、おそらくは肉の香りづけに使われるんだろう。

※1 Gran Premioは競馬の大賞典レースという意味。

サルディニアの珍味、カラスミくん

サルディニアでぜひ味わってほしいのは漁師の料理だ。やっぱり日本人は海のモンさね。

中でもサルディニア名物として名高いのが、ボッタルガ(Bottarga)と呼ばれるカラスミだ。

味もレシピも、日本のものとよく似ている。

なに、イタリアにもカラスミがあるのかって?

むふふふ、お客さん。カラスミなんていうと、何となく日本独特の珍味だと思うだろうけど、実はあっちの方が本家本元なんだよ。

カラスミの起源は古代ローマ時代――ギリシャ・トルコなどの地中海沿岸で、ボラの卵巣を塩漬けにして乾燥させたものが、しばしば彼らの食膳に上がっていた。作り方なども、今のものとあまり変わらなかったようだ。

それがシルクロードを通じて、中国に伝えられ――さらに17世紀頃、オランダ人を通じて長崎に伝来したのがカラスミと言われている。未だにカラスミが長崎名物なのは、そういうわけなのさ。

日本じゃ形が唐の墨に似ていることから、カラスミと呼んでいるが、あちらのボッタルガ(※2)は、アラビア語の塩漬け(Burarih)、あるいは魚卵(Battarikh)が語源と言われている。

もともとはボラの卵で作ったもののみをボッタルガと呼んでいたが、今ではマグロでも作られている。ボッタルガ・ディ・トンノ(bottrarga di tonna)と呼ばれ、ボラのものより色が薄いのが特徴だ。

ボッタルガは薄切りにしてレモン汁、オリーブオイルをかけて前菜に出すのが、サルディニアでの一般的なの食べ方だ。また、すりおろしてパスタにかけるのも美味しく、こいつは最近の日本のイタ飯屋さんでも、やってる店が多いようだ。

さーて、時間が来やがった。

それじゃ、お客さん。次回をお楽しみに!

※2 サルディニア方言ではブッタリガ(Buttariga).

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