新美の巨人たち「伊藤若冲『月に叭々鳥図』×渡辺いっけい」〜とても興味深く視聴いたしました!

新美の巨人たち 伊藤若冲『月に叭々鳥図』

3日前の土曜日、「新美の巨人たち 伊藤若冲『月に叭々鳥図』」を放映されていたのを視聴しましたが、実に興味深々でした。

現在大人気の伊藤若冲は奇想の画家として知られています。
もちろん、この人の絵画の持つ斬新なアイデアと技法は余人の追求を許さないものですが、個人的な意見を一言で言えば、その本質は真面目で謹厳実直な絵師に思えます。

果蔬涅槃図(かりゅうねはんず)

こちらの果蔬涅槃図を見ていただければ ↑  わかるのですが、野菜をブッダの涅槃に見立てたこの絵…若冲お得意のユーモアに見えますが、実は生き物に対する慈しみに満ち溢れた作品だと、私は思っています。

若冲が経験な仏教徒だったことは有名ですが、この人が描く生き物というのは、そんな気持ちにあふれているのですね。

そんな意味で、番組に取り上げられた『月に叭々鳥図』も、生き物に対する慈しみが顕れてた作品ですが、それにしてもこの絵は謎が多過ぎです。

そもそも、鳥がなぜ落下していくのが謎ですし、落ちていくのか急降下していくのかが区別できない。

ただ、叭々鳥の表情は、獲物を求めて降下していくのではなさそうです。どちらかといえば「ひゃ〜!」っと叫びながら落ちていく表情に見えなくも…いやいや、違うぞ!

白目の中心から、黒目がわずかに下に向いた、この目は「何かを見てしまった目」ですね。そもそも人間以外の動物は、相手に視線を悟られないため、白目と黒目の境界がこんなハッキリしてません。

これは明らかに日本語を喋る人間の目ですね。
手塚治虫先生の動物が、みんな日本語を喋る目をしているようなものでしょうか(笑)。

さて、この番組では、『月に叭々鳥図』を収蔵している岡田美術館の正面を飾る、風神雷神図を描いた福井江太郎画伯が出演し、絵の技法を紐解いていたのが面白かったです。

にじみの出やすい紙を用い、叭々鳥(はっかちょう)の輪郭を描いているというのは、なるほど納得です。

また絵の上部に描かれた月は、円形に切り取った型紙を用いているということで、現代のマスキングテープと同じ技法を使っているのも興味深いところです。
ただ、若冲だったらフリーハンドでも、こういう円は描けたかもしれません。

 「花鳥図押絵貼屛風」(部分) 細見美術館

↑ こちらの鶏の屏風絵をご覧ください。

勢いよく描かれた尾の部分は、明らかに一気に描かれたものです。
線というのは実に不思議なもので、一度描いたものと同じ線は描けません。大抵の場合は、一番最初に描いた線が一番生きている線で、勢いがあります。

ただ、勢いの線だけで、なかなか絵は成立しないので、勢いのある良い線を生かしながら、ほかの部分をじっくり時間を掛けて描いていくのですね。

そんな意味で、 『月に叭々鳥図』は番組で言われているように、良い線を生かしつつ、時間をかけて計算して描かれたものに違いありません。

それにしても、叭々鳥は何を見て、何を叫んでいるのでしょう。
まことに興味はつきませんが、だからこその名画なんでしょうね。

▼「しゃちょぉ〜、一杯いかが〜♡」
「いや〜、困ったなあ〜(と、夢グループの社長風に)」♪

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