昨日は丸の内で勉強会をしたあと、三菱一号館美術館でヴァロットン展を見てきました。日本では今回の展示ではじめて知られるようになった画家ですが、それにしても平日の昼間に大勢の人が来ていたなあ。
新聞などでも書評が目立っていたことに加え、やはり三菱一号館美術館で取り上げることもあったのでしょう。美術関係でも話題になっていた展覧会であります。
↓ こちらが書評などでとりあげる時に紹介される代表作「ボール」
公園内の建物の上から見た構図という、写真時代でないと考えつかないような構図。
この絵からしても、スイス出身パリで活躍していた画家ということもあって、スタイリッシュで洒脱な絵描きだと思ってましたが、展覧会を見てびっくり。
ポスターに使われている「ボール」も、意外に不器用なタッチではあったものの、独特な不思議な世界を展開。
ところが他の絵はというと、特に晩年近くの意外にぼってりして、しかも陳腐で俗な絵をいっぱい描いてる人でありました。
もっとも、ここで言う「陳腐で俗」というのは悪い意味ではありません。
それは、合唱つきの大オーケストラで陳腐でセンチメンタルなメロディを歌い上げるマーラーの交響曲のようでした。
特にペルセウスやアンドロメダなど神話を描いた作品は、陳腐というほかはないのですが、それと並列されている戦争を描いた作品群が、妙に深く、奇妙なコントラストをなしていました。
マーラーはヴァロットンより5つ上でほぼ同時代。
ボエミアの田舎からウィーンに上京してきたという、ヴァロットンと同じ異邦人というのも、絵画と音楽という違いはあるにせよ、19世紀末という時代をあらわしているような気がしました。
どの書評にも「陳腐」という言葉は書かれてません。
書くと悪く誤解されかねないのでしょうが、この画家には「洒脱と陳腐」という矛盾した言葉が合うような気がしました。
展覧会は23日まで。ご興味ある方は足をお運びくださいませ。