サントリー美術館「谷文晁展」〜見てきました!

谷文晁(たに・ぶんちょう)展、見てきました。

ポスター見た感じでは左程好みの絵ではなかったので、そのままスルーのつもりでしたが、ツイッターの評判や、ジム友の絵描きさんの「良かった」という声を聞いて気が変わり、閉幕2日を残して行くことに。

いやあ、展覧会というのは見てみないとわかりません。会場に丸2時間釘付けにさせる見応え十分の展覧会でした。

ポスターに使われているオランダ絵画の花を模した絵が、展示替えでなかったのは残念でしたが、そもそもこの絵が好みでなかったので、まあ良いかって感じかな。

それより竹林や山水を描いた水墨画の見事な屏風絵などは見事なもの。
文晁周辺の絵師の作品も満載で、まことに堪能いたしました。

文晁の生涯を見ると、画家とすると豊かな人生を送った人なようでした。
文雅豊かな家系に生まれ、12歳より狩野派の画家に師事。30歳の時には、あの寛政の改革で知られる松平定信公がパトロンになっています。

渡辺華山ら、弟子にも恵まれ、亀田鵬斎、酒井抱一などとも親交を重ね、当時としては長生きの78歳で天寿を全うしています。

旅好きで30歳までには、日本国内行ってない国は5〜6国だったとか。旅先で描いたスケッチは空気感があり、「嗚呼、昔の日本はこんなに美しかったんだろうな」と思わしめるほどです。

オランダ絵画の模写があるように江戸後期のこの時代、鎖国とは言いつつ、西洋絵画との東西交流があったのは、先の拙ブログでも取り上げたようなお話であります。

孔雀や草木の見事な描写は、明らかな西洋絵画の影響ですが、わたしが惹かれたのは、描写がしつこい若い頃の絵ではなく、次第に引き算をするようになった後半生の絵でしょうか。

文晁と自分を一緒に言うのもナンですが、わたしも引き算の得意な絵描きではありません。描いてくうちに、空間がだんだん余計なもの、ヘンなもので埋まっていくタイプなのですが、それだけに初期の文晁を見ていると息苦しくなります。

暑苦しいヤツが、別の暑苦しいヤツを「暑苦しい」と言ってるみたいなものですが、才気走った文晁の若い頃の作品は、まさにそんな感じかな。

文晁は南画(中国の南宋画をもとに、江戸時代発展した画風)を勉強した人ということもあるでしょう。

↓ こちら文晁ではなく、北宋時代の画家・郭煕(かくき)の作品。

見ての通り、びっしり描き込んでいて油彩画のようですね。

実際に中国の水墨画は、こういう作品が多く、空間を生かした水墨画は日本で完成したと言って過言ではありません。
雪舟が明に渡った時に学ぶものがないと感じたのも、そんなことでしょう。

文晁の南画は、中国水墨画の呼び戻しのような要素があり、それが西洋絵画の影響を受けたとならば、凄まじい描写の嵐も納得できるというものです。

ただ、個人的には東方地方を旅した時のスケッチや水墨画、山水図に惹かれたかなあ。

別の意味で惹かれたのが、石山縁起絵巻の中にある火の描写。年表を見ると文晁は大火を経験したことがあるそうで、目の前に迫ってきそうな炎の表現が鬼気迫るものがありました。

見ていて存在の大きさを感じさせたのが、パトロンの松平定信公です。

定信は田沼意次の賄賂政治を一掃した、寛政の改革で知られる人ですが、こちらの経済制作は窮屈過ぎてうまく行かなかったようですね。

将軍候補と言われた人らしいですが、権力争いにやぶれ、現在の福島県、白河藩の藩主となったためか、「白河の清きに魚のすみかねて もとの濁りの田沼こひしき」と揶揄されたそうですが、藩主としての評価は名君として高いようです。

そんな松平公が三ツ又の珍しい稲を見つけ、文晁に描いてくれと頼んだスケッチがありました。絵の面白さももちろんですが、藩主と絵師。どんな会話がなされていたのでしょう。

身分の違いは別にして、きっと仲が良かったのでしょうね。そんな関係が伝わる一枚でした。

ところで谷文晁、大変な画家ですが、何が足りないかというと色気でしょうか。
見ると女性を描いた作品はすこぶる少なく、坊主とかオヤジの絵ばかり。

たまに女性の絵があったかと思うと、観音さまや弁天さま(他の仏だった?)で、現実の女性を描いた作品は見当たりません。色気のなさは、五百羅漢の狩野信一を思わせます。

これは元々の体質もあるでしょうけど、松平公が色気に関しては謹厳実直な方だったそうで、そんなことも影響してるのかもしれません。

↓ こちらは谷文晁ではなく、卒爾ながらわたくしの作品。銀座の山形物産展の2階にある ヤマガタ・サンダンデロに飾られてる「山形山水図」です。

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