「横山大観展」見て来ました!

連休は連日の晴天♪
29日、昭和の日に近代美術館で開催されている「横山大観展」に行ってきました。
こちらはベラスケスのプラド美術館展とは違った意味で素晴らしい展覧会でした。

それというのも、横山大観という人……わたしなどが言うのもおこがましいのですが、お世辞にも上手な画家というわけではありません。
夜桜とか生々流転、屈原像のように気合いの入った絵はもちろん素晴らしいのですが、けっこう駄作も多く、大酒飲みだったのでお酒を飲みながら描いた絵もけっこう多い。

同時代の下村観山のように正確に筆が走るというタイプではありませんが、だからといって速水御舟のように慎重に筆を置いていくタイプでもありません。
線が甘かろうと不均衡だろうと、迷いなく線がグイグイ走る画家と言えます。

ただ、線の甘い駄作もそれなりの味があって、かえって大観先生の人となりがわかる作品となっているのが、この画家の魅力と言えましょうか。

大観という雅号も、お坊さんとお酒を飲んでいたら、その時に見た経文から「大」と「観」の字が目に入ってきたからという、何ともこの人らしい大らかな理由です♪

横山大観は水戸藩士・酒井捨彦の長男だそうで、姓名からすると徳川家臣だったあの酒井家と何か縁があるのかもしれません。後年、母方の縁戚である横山家の養子になったため、横山姓になったそうです。

水戸藩は尊王の気風が高い土地柄で、彼の富士山シリーズなどはそのあらわれだと言われています。

この土地の気風として、もうひとつ言えるのが、良く言えば「大らか」。わるく言うと「節操がない」ところがあって、それが絵にもよく出てると思いました。

若い頃の絵でびっくりしたのが、ブッダとキリスト、孔子に老子が四聖として描かれている作品です。

なんだ、こりゃ! マンガ、「聖(セイント)☆ おにいさん」じゃないの!
西洋人が見たらぶったまげるような絵であります(笑)

それから金箔をほどこした二双屏風に、それぞれナイヤガラの滝と万里の長城が描かれているものや、ハレー彗星を描いた掛け軸など、大観先生のイマジネーション豊かな意匠が何とも面白い♪

圧巻はやはり55歳の時に描いたという「生々流転」でしょうか。

50mに及ぶ日本最大級の絵巻物は、まさにこの人でないと描けない大作です。
川の流れをひたすら追い続ける絵巻は、霧の中からまるでブルックナーの交響曲のようにはじまり、文字通り生々流転します。

それは禅の世界で言う十牛図さながら。



▲すみません。
僭越ながら、拙著「中学生にもわかる仏教」から十牛図を引用いたしました。

十牛図と違うのは、最後は霧の空白で終わるところでしょうか。
最後が空白で終わる絵巻物は、ほかにもあるのですが、もっと無常観漂うもの。
大観先生の「生々流転」は空しさで終わるのではなく、静かにシンフォニーが終わるような清々しさがあるのが、この人らしいところでしょう。

長い大きな絵なのに、見ていて少しも疲れないのも横山大観の大らかさでしょうか。

横山大観は生まれた場所柄もあってか、大変な愛国者だったそうです。
戦時中は「海に因む十題」を売ったお金で戦闘機4機を購入して寄付したと言いますから、左翼系の平和主義者の方が聞いたら、目をむきそうな(笑)。

そういえば、来週の日曜美術館は横山大観が取り上げられますが、コメンテーターは左翼系統の作家・高橋源一郎氏だそうです。いやはや、なんとも(呆)。
以前、宮崎進先生のインタビュアーに姜尚中氏を当てていた日曜美術館ですから、大観先生についてもどれだけねじ曲げられてオンエアされるかわかったものではありません。(長州出身で志願兵で参戦し、戦後4年もシベリアに拘留されていた宮崎先生に姜尚中を当ててくる日曜美術館っていったい何? ですね。学生時代には一度も見たことのない、宮崎先生の不愉快そうなお顔を見て本当に気の毒になりました)。

来週の日曜美術館……横山大観の戦時中の絵には戦没者を悼む作品が数多くあるので、高橋氏に「戦争反対のメッセージ」とか作者の意図とは違った、自分の意見が勝手に作品に投影されるのではないかと思います。

見たくないですが、見てしまうだろうな。
日曜美術館に限らずアート関連の番組は、作者が意図していないだろうことを、コメンテーターが勝手に自分の思いを語るものが多過ぎて、辟易することがあります。もちろん、そうでないものもあるのですが。

ともかくも横山大観展、5月8日から27日まではあの「夜桜」と「紅葉」が展示されます。多分、もう一度見に行くでしょう。

もう一度ブログUPしますので、お楽しみに!

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