マチェール(画肌)の画家〜バルテュス展

土曜、キトラ古墳に4時間かけたあとは、さすがに帰ろうと思ってましたが、上野公園の噴水の前でやっていた新潟物産展でお焼きを食べたら気力が回復。

見られる時に見てしまおうとバルテュス展に行ってきました。

バルテュスの名を最初に聞いたのは大学4年の時だったでしょうか。美術評論家の峯村敏明先生に自分の絵を見てもらった時↓(バルテュスと一緒に並べて失礼します)

「きみはバルテュスが好きかね? いや、バルテュスって知ってる?」と尋ねられた時でした。

不調法にも私はバルテュスを知らず、そのまま大学の図書館で見てはじめてこの画家の存在を認識したというわけです。

その時、まだ日本では今ほどバルテュスの名は知られておらず、知ってる人は知っているという幻の画家といった存在だったかと思います。
この日、たまたまBSでもバルテュスの特集を放送していましたが、なかなか女性遍歴の激しかった人で、この人の生前は「気難しくてインタビューが難しいけど、好みの女性が行くと簡単に会ってくれる」というのが笑い話になっていた人でした。

なかなか実物をまとめて見るのが難しい画家で、私もこれだけ一堂にバルテュスの絵を介して見たことはありません。
それだけに必見の展覧会だと思いました。

実物を見て驚いたのが、そのマチェール(画肌)の厚さです。

中にはキャンバスの荒めの目が見えてる作品もあったりして、すべてがそうだというわけではありませんが、後期の作品はかなり時間をかけて制作したのか、それともわざと厚塗りにしていったのか、相当に重厚なマチェールです。

これがチューブ絵具を使った普通の油彩画なら、よくある話なのですが、バルテュスの場合は相当に複雑な技法を使っているようです。

アトリエの風景を見ても、チューブ絵具以外に自ら調合した顔料を使っていたようで、晩年は節子夫人が調合の仕事を任されていたようです。

たびたび自分の映像で恐縮ですが、こちらはエッグテンペラを使った混合技法。

バルテュスは古典的な混合技法を研究していたそうですが、16世紀くらいまでの西洋画というのは素材的に厚塗りができませんでした。

卵とリンシード油などを混ぜ、水で溶いて塗り重ねる技法では厚塗りすると、すぐ剥落してしまうからであります。

上の写真にあるエッグテンペラは、ダンマル樹脂という松やにの一種を混ぜているため、水にも溶けるし、油彩画の上に塗ることもできるのです。

バルテュスの絵にエッグテンペラを使っているのは考えにくいのですが、カゼイン(乳製品由来のたんぱく質)を使っていたという表示がありましたから、後期の作品のバックにある独特のフラットな色調は、ミルク由来の色だったかもしれません。

厚塗りした作品の中には、色々実験を繰り返したものもあったようで、すでにヒビが入ってるものもありました。
レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」が、そんな実験によってのちの修復家を悩ましたように、バルテュスの作品もそうなるかもしれません。

なんだか技法のことばかりになりましたが、一番人が興味を抱く「画家とモデル」の関係については後日UPいたします。

 

マチェール(画肌)の画家〜バルテュス展” への2件のコメント

  1. こんにちわ。

    >晩年は節子夫人が調合の仕事を任されていたようです。

    ふむ、藝術の陰に女あり、然も大和撫子、宜なるかな???

    スキャンダル、か否かは難しいですね。
    何しろフツーの人ではないのですからね。
    ピカドン、チっ、違う、ピカチュー、あっ、これも違う、
    ピカ、そうピカソもフツーの人じゃなかったんですよね。
    そもそもフツーって普通なんなんでしょう???

  2. お頭さん、おはようございます!

    >スキャンダル、か否かは難しいですね。

    一昨日のBSで見る限りはスキャンダルの範疇には入りませんね。

    バルテュスはいわば世之介ですね。
    根っからの女好きで、しかもモテる。
    アーチストとしてはむしろ健全なのではないかと思いました。
    次回はそのことを記事にしようと思います。

    >そうピカソもフツーの人じゃなかったんですよね。

    結婚と愛人の数ではピカソの方が上でした。
    あの人のナンパの仕方は「君は美しい、私のモデルにならんか? 私はピカソだ」でした。
    一度、真似して言ってみたいものです(笑)

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