昨日はもうすぐ終わりになる上野の西洋美術館のラファエロ展と、三菱一号館美術館のクラーク・コレクションを見に行きました。
クラーク・コレクションはほとんどルノアール展という感じでした。
いや〜、最近の展覧会はクオリティが高いですね。
ラファエロもルノアールも、あちらに行ってもまとめて見ることはできない、なかなか壮大な展覧会でありました。
若い頃はラファエロのどこが良いのか、よくわからなかったのですが、年を重ねるごとに彼の絵のみずみずしさというものに惹かれるようになりました。
ラファエロには、彼が尊敬していたレオナルド・ダ・ヴィンチの深さとか、ミケランジェロの力強さはないのですが、偉大な2人の先輩にないものも持っています。
それは何か?
まさかと思うかもしれませんが、それはポップで斬新な感覚です。
ミュージアムショップのTシャツやクリアファイルにして、一番似合うのは、何と言ってもラファエロの作品!
500年も前の人なのに、商業アート路線に乗せられるなんてホント凄い!
それじゃラファエロ前と後では、何が違うかといえば、ラファエロこそはまさにルネサンスの寵児でした。
それまでの重苦しい宗教画から、軽やかで明るくポップな彼の作品が、その後の絵画を大きく変えたのですね。素晴らしい!
現代のイタリアのデザイン・・・ランボルギーニやフェラーリにはじまるカーデザインや、グッチやアルマーニ、マックスマーラなどを見ると、面白いことに、イタリアのルネサンス絵画とは対象的にシンプルで軽やかなものが多いのです。
それはあの石畳の中で暮らしていると、シンプルな形や色がほしくなるからだと私は考えています(イタリア人にも、それを話したことがありますが、たしかにそうだと言ってました)。
ラファエロはそのスタート地点にあたる画家・・・というと、あまりに我田引水かもしれませんが、彼の絵はそれほどわかりやすく明るく軽やかなのです。
一方、日本で最も人気の画家ルノアール。
ラファエロも大混雑でしたかが、こちらも入場20分待ちの大行列でした。
あふれるような色彩と、透きとおるような肌の描写は見事というほかはありません。
ルノアールが描く女性の肌というのは、最初にシルバーホワイトをベースに下塗りし、乾いたあとにエマイユという技法で重ね塗りをします。
エマイユというのは琺瑯のことで、薄く溶いた油絵具を陶器に絵付けするように、何度も何度も重ね塗りすることによって、女性の肌の透明感を表現します。
肌の色に青や緑が入っているのは、陽光を反射する白の中にあらゆる色が含まれているからですが、当時権威を持っていたフランス画壇サロンでは激しく非難されました。
不思議だったのは、依頼されて描いた絵で、引き取り拒否をさせられた作品がけっこうあったことです。
↑ ポスターになった桟敷席の絵もそうです。
もっとも芸術的な価値は別にして、肖像画を依頼したクライアントが、出来上がった絵を気に食わないで怒り出したというのは、レンブラントの「夜警」を筆頭に、そんな珍しい話ではありませんが、ルノアールの場合は意外な理由がありました。
それは、絵の中で着せられている服を、依頼主(あるいはモデル)が気に食わなかったというのです。
ルノアールが絵を描く段階で、実際にモデルが着ていた服と違うのを描いたのかはわかりません。
ただ、天下のルノアールに言うのも何ですが、ドレスだけ見ればセンスが良いとはいえないものも・・・(汗)。
絵の中ではバランスがとれてるので、気がつきにくいのですが、率直に言って「この服、ちょっと人前では着られないなあ」というものが少くな・・・(また汗)。
ぼってりして、パーツのデカい服が多いのですよ。
実は絵画の才能とデザインの才能、同じではありません。
多くの絵画は足し算で作っていくのに対して、デザインというのは引き算です。
ルノアールの場合、絵画の空間の生かし方は抜群ですが、ドレスのデザインセンスがあったかというと・・・。
ご覧になる方は注意してみると面白いと思います。
ルノアールの価値を下げたくて言ってるんじゃないですよ。絵はホントに素晴らしいんだから!