泊真美子のショパン&リスト


連休中の土曜、大船にある鎌倉芸術館に泊真美子さんのピアノリサイタルを聴きに行きました。
泊さんのピアノを聴くのは1年ぶりで、丁度昨年の母の日以来かな。
早いものですわ。
今回の演目はお得意のショパンとリストに絞られており、実に充実した内容のコンサートでした。

この人のピアノ、最近の日本人ピアニストの中では珍しく、
聴いていて心地よいとか、癒されるといった音ではありません。
ベートーベンやリスト(それにショパンも)といった男性的な音楽家と
がっぷり四つに組んで一歩も弾かない演奏であり、
また次にどんな展開があるのか、常に聞き手をドキドキさせてくれる演奏です。
もしかすると、往年のホロヴィッツを意識しているのかもしれませんね。

演目にはショパンの英雄ポロネーズや舟歌といった大曲もあって、
それは聞き手も演奏家も真剣勝負。
耳ざわりの良い演奏というのではなく、
特に舟歌などはショパンの心の痛みが伝わってくる演奏でした。

面白いことに聴いていて楽しかったのが、後半のリストの演奏でした。
ご本人もリストを弾くと元気になると言ってるけど、
こんな、喜々としてリストを演奏する人も珍しい。

むかーし、ソ連からラザール・ベルマンが”リストの超絶技巧練習曲”を引提げて登場した時、
吉田秀和先生が「難所になるほど、舌なめずりをしながら弾いている」と仰いましたが、
なんか、その言葉をそのまま当てはめたい素晴らしいリストでした。
ことリストに関して言えば、この人はもう大ピアニストの境地にあると思います。

次は彼女のラフマニノフを聴いてみたいです。

泊真美子のショパン&リスト” への2件のコメント

  1. 難所
    > 「難所になるほど、舌なめずりをしながら弾いている」

    いやあ、これ、めっちゃ理解できますわぁ。

    以前、ジャズドラムの師匠である猪俣先生に伺ったことがあります。
    「ソロは、どのように演奏したら良いのですか?」
    師曰く「頭を真っ白にすると良い演奏ができる。
    考えすぎないこと」

    例えば、サッカーならゴールキーパーと1対1になった時、
    シュートは思い切り打たずにゴールマウスに流し込む。

    元日本代表監督のジーコさんは、こう言っています。
    「シュートはゴールへのパスだ」。

    分野は違えど、言っていることは同じであることが分かりました。

  2. まだその境地には
    大江戸さん、おはようございます

    ううむ。
    私はドラムもサッカーも感覚的にはわからないのですが、
    言ってることが同じなのは理解できます。

    お相撲でも「何も考えずに取る」なんて言いますが、
    いやはや、私はまだその境地には・・・
    って、いつその境地になるのかって話ですがね~。

    絵も文章も時間軸が音楽やスポーツとは少し違うので、
    まあ仕方ないかなとは思ってますが、
    線を引く時は、ややその世界に近いかな。

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