キレる老人が増える理由〜なぜか小津安二郎の『麦秋』(1951)を見てわかりました。


▲小津安二郎『麦秋』(1951) wikiより

昨日の夜、たまたまオンエアされていた小津安二郎の『麦秋』を見ました。

なにせ72年も前の映画です。
今見るとかえって新鮮に思える映像に驚くとともに、さすがに今の価値観と乖離した家族のあり方に、別の意味でびっくりしました。

今とは年齢の感覚が違うとはいえ、原節子演じる紀子が、まだ28歳に「行きおくれ」という言葉が使われ、自らがそれを口にしています。
令和の世の今なら、レッドカード一発退場ですね(笑)。

そして、紀子の縁談の相手が40歳。
紀子の母らは「年が離れすぎている」不満を口にするが、兄(笠智衆)は「紀子の年齢では贅沢は言えない」とたしなめるのです。

でも、この辺の世代の相違は想定内ですね。
本当に驚いたのは脇役で出てくる、当時の子供たちの態度です。

当時、高価だったろう鉄道模型で遊んでいるところを見れば、北鎌倉のお坊ちゃんたちのはずです。
しかしながら、目上の大人たちに対する態度や素行がなっておりません!

モノをもらう時に、礼も言わず平気でブン取る。
鉄道模型のパーツを買ってくれない親に「嘘つき」と言って、家を出て行く。
お父さんが買ってきた食パンを蹴とばしてボロボロにする。

もちろん、映画『麦秋』はお話であって実際の話ではありませんが、当時はこういう子たちが裕福な家庭にも当たり前にいたのでしょう。
今時の子で、パンを蹴とばすなんて、ありえません。

1951年といえば、戦後まだ6年でGHQの統治下です。
当然、ここに出てくる5歳から8歳くらいまでの子は戦争を知りませんし、戦後急激に変わった価値観で育ってきた子です。

映画は72年前ですから、この子たちはちょうど70歳後半から80歳くらいになっている計算になりますね。

昨今、「キレる老人」と言われる世代の走りでしょうか。
この子たちは、その後の人生で…モノをもらってもお礼も言わず、自分の主張が通らなければ逆ギレして、食べ物を蹴とばす人生を送りながら、70年以上も生きてきたことになりましょうか。
なるほど、キレる老人が増えてきたのは、昨日今日から生まれたわけでなく、もっと根の深い話だったわけです。

もちろん、この世代の人々が全員そうだとは思いませんが、戦後GHQが行った教育の効果…おそるべしと言うところでしょうか。

70年前の普通の家庭を描いた小津安二郎作品から、別のものが見えてきた次第です。

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