2年ほど前にベストセラーになった「漫画 君たちはどう生きるか」を読了しました。仕事の関係で読みはじめた本ですが、やはり食わず嫌いはいけませんね。
原作者の吉野源三郎さん、1981年にお亡くなりになった明治生まれの著者ですが、もともとの「君たちはどう生きるか」は70年以上前に書かれた作品だったようです。
経歴を見ると戦時中、陸軍に入隊。除隊後に社会主義活動をはじめたという、この時代のインテリに時々いた方だったようです。
しかしながら、この時代の左翼系の人たちは素養が違います。いや、右翼左翼という言葉を、この時代の人に簡単に当てはめて良いものかどうか。
ともかくも生き死にが身近にあった時代だけに、生きることについて真剣に考えて勉強をしていたのでしょう。
興味深かったことのひとつが、主人公潤一くんのあだ名が「コペルくん」で、その名はあの地動説を唱えたコペルニクスから来ているということでしょうか。
この本のテーマのひとつに、人間は自分のまわりだけが世界だと思い込んでいるけれど、実際には自分の知らない大きな世界のひとつに過ぎない、ということがあります。
真実はその知らない世界の中にあり、自分を取り巻いている世界は時に思い込みに過ぎなかったりします。
おおよそ科学というのは、そんな世界を扱う学問なのですが、時に人間社会というのは、真実に目をむけないことも多々あるわけで、コペルニクスの地動説も長いこと教会から否定されてきた経緯があります。
「われわれの立ってる地球がまわっているなんて、とんでもない」という具合に。
わが国でも真実を口にすると逮捕された時代はあるわけで、そんな時代に生きた著者だったからこそ、このようなものが書けたのでしょう。