三田誠広「空海」読了です〜拙著「中学生にもわかる仏教」が電子書籍になります!

先日、拙著「中学生にもわかる仏教」を電子書籍用に原稿を出したタイミングもあって、しばらく前に読了した三田誠広さんの「空海」について取り上げてみたいと思います。
先達の芥川賞作家の作品に、自分の本を引き合いにするのは憚られますが、そこは自分のブログゆえご容赦ということで(笑)。

三田誠広「空海」のあとがきでも書かれているように、現在、伝説以外の弘法大師史観というのは、ほぼ司馬遼太郎の「空海の風景」に依っていると言って過言ではないでしょう。司馬氏の同書の評価はここでは控えますが、そこからまったく違った空海像を描き出したというところに、この本の面白さがあると思います。

三田誠広という作家は、物理学や仏教など専門外の分野を、ひじょうによく調べて文章にすることに長けている人ですが、同書「空海」もそのような本であります。

さすがに小説家らしく、史実にないエピソードも折り込んで書いてはいるのですが、史実をわかって書いているため違和感がありません。

たとえば空海の幼少期〜真魚(まお)と呼ばれた時代に、実在しないと思われる修験道者や女性が登場する場面。山岳を自由に行き来する10代の空海の姿は、まさにそうだったろうと思わせるほどです。
「空白の三年間」と呼ばれる、空海が歴史から姿を消えてしまった三年間も独自の解釈で描いています。全国にある弘法伝説にちなんだのか、ここで空海は東北で坂上田村麻呂と阿弖流為(アテルイ)との架け橋になるのですが、それもさもありなん。話としては面白い限りです。

拙作「まな板菩薩」(横浜バージョン)。

また、単純に空海の足跡をたどるという物語ではなく、密教そのものに深く入り込んでいる点が注目です。

ご存知ない方のために注釈をしておくと、密教は紀元5世紀くらいにインドで生まれた、必ずしもお釈迦さまの教えに従ってない仏教です。あくまでブッダは、宇宙に普く仏の一人であり、その中心は大日如来を本尊にする点が特筆されます。

汎神論と呼ばれる「宇宙全体が仏であり神である」という思想が流れており、さらには文字通り秘密の教えなため、修行を積んでない人間にはその本質はわかりません。

しかしながら三田誠広「空海」では、その教えの片鱗が文字として書かれているのが面白いところでしょう。密教関係の人は、外部にその教えを決して漏らさないと言いますから、たぶん推測で書いているのでしょうが、伝法潅頂と呼ばれる儀式の様子なども描かれているのは興味深いところ。

密教の深い部分は修行を伴わない未熟な人間に伝わると危険なため、教えないというのがその大きな理由ですが、一方で弘法大師の教えは字の読めない人にも、それなりに用意されているのが、空海の教えの優れたところと言われています。

▲さて拙著の話になりますが、久しぶりに自分が書いた文章を読み返しましたが、けっこう書いたことを忘れていて、かえって面白く読みました(笑)。

密教を取り上げた章は、一番気持ちを入れて書いたようで、分量もイラストもそれなりにボリュームがありました。

電子書籍として上梓される日程は、まだ未定ですが、近く発刊される予定です。
ネットでも同書は残り僅少。この機にぜひお手元に置いていただければ幸いです。

余談ながら、拙著「インドのアチャールくん」ですが、絶版にはなっていないはずですが、ネットでは 7,800円から13,000円の価格で売られていました。ちょっと前まで1円で売られていたのですが、嬉しいようなさびしいような複雑な気持ちです。

近く「アチャールくん」と「シエスタおじさん」をカップリングした短い絵本を上梓する予定です。こちらも合わせてよろしくお願いします。

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