「仁和寺と御室派のみほとけ」展、見て来ました。
降りしきる雨の中、開場10分前の9時20分に到着。並ぶこともなく、難なく入れたものの、その後でワラワラと入ってきたお客さんで激混み。
見終わったのが12時半と、たっぷり3時間の鑑賞を堪能いたしました。
そもそも神道の元締めである天皇の一族が、仏教の特別な宗派である、密教の阿闍梨(あじゃり・密教で特別な修行を積んだ高僧、指導者のこと)になっていたというのが驚きでした。
仁和四年(886)、光孝天皇によって建立を発願され、次代の宇多天皇によって完成されたそうですが、歴代天皇の残した書が能筆なのが素晴らしい。特にかの後醍醐天皇による宸翰(しんかん・天皇自筆の書)は実に見事でした。
普段の展覧会だと素通りしてしまう書の展示ですが、空海の直筆などは、読めなくとも興味津々。「読めない」とは言っても、何となく漢字の意味はわかるので、それなりに面白いものです。
密教の真骨頂、マンダラの展示もお見事!
着色によって完成されたものや、筆でサササと描いたものなど、さまざまなマンダラが並べられていましたが、蟹座や射手座などの絵を西洋占星術と同じ、同心円状に描かれた鎌倉時代のマンダラもあって、そちらも興味津々でした。
仁和寺はほかのお寺と同じく、応仁の乱で灰燼と化したようですが、その時に持ち出せるものは持ち出したようですね。室町時代以前の書やマンダラなどが、所狭しと展示されていたのは、そんなこともあったのだと思います。
圧巻は何といっても、第二会場に展示されていた仏像の数々。
こちらは残念ながら、応仁の乱以前に仁和寺にあったものは、さすがに持ち出せなかったのでしょう。文字通り、御室派(おむろは)と呼ばれる、仁和寺一帯の一派におさめられている御仏ですが、それはそれは見事なものばかり。
白眉はやはり、葛井寺(ふじいでら)所蔵の千手観音さまですが、実際に腕が千本ある千手観音はこれだけだとか。ほかにも唐招提寺の千手観音も千本腕があったと言いますが、現在は953本だそうで、大抵は42本の腕に集約されているようです。
千本ある手の平には、それぞれ目が描かれていて、水木しげる先生の「妖怪・手の目」はこのあたりからの出典かもしれません。
葛井寺の十一面千手観音さまのお顔ですが、こちらは意外な困り顔。
写真を見ても、この困ったような不思議な表情はぜったいわからないので、一見の勝ちがあると思います。
実に素晴らしい展覧会ではありましたが、ひとつだけ残念だったのが、見に来たお客さん……それも年配の方のマナーがいまひとつだったことでしょうか。
写真にある江戸時代に作られた千手観音とその脇侍たちの群像は、撮影可・フラッシュ不可のエリアでしたが、そこでバチバチフラッシュを焚いてる人の多いこと。
また場内で電話をかけてる人もいたり、ガンガンぶつかってくる人など、どれもけっこうな高齢の方が多いのには難義しました。
先日、「なんでも鑑定団」に95才の男性が出ていて、自分で「運転がうまい」と自慢しているのに呆れたところです。お年寄りだからといって若者をひき殺して良いはずはなく、案の定、100万円と意気込んでいた、その方のお品は200円とか2000円に終わりました。
みほとけを見るのであれば、それなりの気持ちで見てほしいもの。
電話をかけてる方にはさすがに注意しましたが、それよりは遠からず同じ年齢を迎える自分がそうならないよう、気をつけたいものだと思いました。
「仁和寺と御室派のみほとけ展」は明後日まで。大混雑が予想されるので、行かれる方はそれなりの覚悟を持って行くことをオススメいたします。