そもそも福ケッチァーノに飾る絵ですが、最初は磐梯山でもドーンと描こうと思っていたのですが、同店でご一緒した宇田川夫妻の「風景も良いけど、農家や畑描いてほしいよね」との一言で、農園と野菜をメインに描くことになったわけです。
今回はたまたま行く時期が、福ケッチァーノのお盆休みだったため、マネージャーにお願いし、お店に野菜を納めている農家さんを6軒ピックアップし、直接電話連絡して行くことにしました。
最初は何で店に飾る絵のために、わざわざ農園までやってくるのか?・・という農家のみなさんでしたが、拙画や仕事を見せて事情を説明しすると、納得してくれまして、それは親切に農園を案内してくれました。
ただ、行った時期がすでにメインの収穫が終わってしまい、次の種まきなどの準備期間だったため、農園に実っている野菜はわずか。
それでも絵を描く作業というのは、持ち駒はいくらでも広げられるもの。
要は郡山という地の雰囲気がわかれば良いわけですが、いや実に緑豊かで五穀豊穣という言葉がピッタリくる場所です。
実っている野菜が少ない中で印象的だったのは、鈴木光一さんが経営する鈴木農園のお野菜で、ここは郡山の中でも数多くの品種を育てている農場だそうです。
最初は「ホントに野菜や農園が絵になんかなるんですか?」とおっしゃっていた光一さんですが、なにをおっしゃいます。
「絵描きがどんなにがんばっても、きれいな野菜の実物の色は出せません」
これ、農園の人にお世辞を言うわけでも何でもなく、ホントの話です。
そもそも鉱物を砕いて作った絵具は、物理的に野菜とは違うものですから、同じようになるわけはありません。ただ、絵というのは、その中であり得ない空間と現実の空間を合わせて画面を構成し表現をするわけです。
そうは言っても、野菜のこの素晴らしい色、同じにはならなくても野菜の力は表現したいよなあ。
陶器の柿右衛門は、柿の色を陶器で出したいので、その名があると言いますが、このたわわに実ったトマトの色も出してみたいもの♪
もぎたての野菜の色はまた格別ですが、光一さんも、まるで画家のように野菜の色を注視してるだけじゃなく、田んぼの稲穂の色、郡山の空の色などをいつも見て楽しんでいるのだそうです。
なるほど、だからこの人の作る野菜はここまで色が美しいのですね。
トマトなどは赤ければ必ずしも甘いわけでないそうですが、色の良い野菜、ツヤの良い野菜は全般に旨いようです。
私はもぎたてで生で食べたトウモロコシの味が忘れられない!
↓ こちらは郡山の田園風景。明治初期にオランダ技師を呼んで、安積疎水(あさかそすい)を作って発展したのが、この町だと言いますが、稲はまさに豊穣の証です。