損保ジャパン東郷青児美術館〜画家たちの生涯

新宿にある損保ジャパン東郷青児美術館、はじめて行ってきました。

ここは周知の通り、バブル時代にゴッホのひまわりを58億円で購入したことで知られています。

今回は「遊ぶシュルレアリスム」という企画展ですが、ゴッホのひまわりも常設されてるとあって、合わせてそちらも楽しみにやってきました。

「遊ぶシュルレアリスム」展は、マン・レイやマルセル・デュシャンなどの展示が多く、だいぶシュルレアリズムのイメージと違うのが面白かったかな。

私が抱いているシュルレアリズムというのは、ダリやマグリット、デ・キリコなど(彼らの展示も数多くありましたが)、脳裏の裏にある世界を描くアートというイメージだでした。
今回の展示はシュルレアリズムの歴史的系譜に沿って並べられており、幻想的な作品よりもマン・レイやデュシャンなどに見られる洒脱な作品が目立っていました。

これが本来のシュルレアリズムかなとも思える展覧会でしたが、やはり一番印象的だったのは企画展ではなく、常設のゴッホのひまわりでした。

さすがは58億円の絵画というと、いかにも下世話ですが、縦1m、横76cmという思ったより大きなサイズです。
両脇にはセザンヌとゴーギャンの作品があり、こちらもゴッホのひまわりに負けない立派な作品。

作品の脇にはそれぞれセザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンの生涯が並べて書かれているのですが・・・その悲惨な生涯にがっくり。

ゴッホは16歳で美術商グーピル商会ハーグ支店の店員になり、多くの絵画に親しむも23歳で解雇。下宿屋の娘に求婚、断られる。

解雇後、教師になるも年末には辞める。ドルトレヒトで書店店員を経た後、牧師を志す。献身が常道を逸しているとして伝道師を解任される。

うーん、社会性がなかったんでしょうな。ことごとく仕事をするも解雇され、27歳で画家を志とあります。

その後、ゴーギャンとの同居。35歳で耳を切り、37歳でピストル自殺をして世を去ったのはあまりに有名な話です。

ではゴッホと同居していたゴーギャンはどうでしょう。

30歳半ばくらいまでは、結婚、サロン入選、パリの株式仲買商に勤めるなど比較的順風満帆な人生。

35歳。株式取引所をやめ、生涯つづく貧困がはじまる。

うぬぬぬ。
エカキさんって、みんな仕事やめて貧乏になっていったのね〜。

43歳、「楽園」を求めてタヒチに発ち、2年後に帰国。
ちなみに有名なゴッホの耳切はタヒチに行く前ですね。

47歳で二度と戻らない決意でタヒチに行く。翌年、長女アリーヌの訃報を受ける。

53歳、マルケサス諸島のヒヴァ・オア島に移住。生活難と健康状態悪化。
54歳、5月8日、心臓発作のため死去。 

うーん、ゴッホより少しはマシだけど、けっこう悲惨な人生だなあ。


落合シェフが営むイタリアンのラ・ベットラですが、こちらは新宿住友店。 1000円のランチなので、店の真価はわかりませんが、少なくとも材料は良いものを使ってようです。

さて、セザンヌはどうだったかというと、父が銀行家だったため食うに困ったことはなかったようですが、度重なるサロンの落選など、長いこと社会的評価を受けなかったようです。

38歳、第3回印象派展に16点出品するが不評、以後不参加。

うーん、でもゴッホやゴーギャンの生涯に比べると、だいぶマシかな。

56歳、パリのヴォラール画廊で個展、好評を得る。

65歳、サロン・ドートンヌで回顧展、名声が確立。
66歳、《大水浴》をサロン・ドートンヌに出品、反響を呼ぶ。
67歳、10月22日、制作中雷雨に打たれおこした肺炎がもとで死去。 

おや、この人。生きてるうちに評価されたんですね。
その前から、印象派仲間からはカリスマだったそうですが、これは意外でした。

評価された翌年に死んでしまうとは残念ですが、制作中の事故となれば本望だったかもしれません。

実はゴッホもゴーギャンも亡くなって数年後には社会的な評価を受けてます。

もちろん、ゴッホの熱狂的なファンが運動したりと、死後尽力をつくした人たちがいたからこそですが、もう少し長生きしてればいい目もあったかもしれないのにねえ。

ともかく、画家の悲惨な人生度は、早死にがそれを決定するようです。

中で長生きしたセザンヌは、おかげで日の目を見てから生涯を閉じたわけですねえ。

拙著「堪能ルーヴル」を書いてる時も、画家の悲惨な生涯の話をいっぱい目の当たりにして、目の前がクラクラしたものですが、いや、世間でよく言う「死んでから有名になる」って、けっこう現実なんですよね。

こりゃ、がんばって長生きせにゃイカンと思った次第でおます(苦笑)。

それにしても、そんな悲惨な生涯を送った画家に58億とは、シャレがキツいで損保ジャパンさん。人生の皮肉を目の当たりにしたような展示、堪能した次第です。

あ、絵画とあんまり関係ない話でスミマセン。次回はじっくり!

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