巨匠マウリツィオ・ポリーニさん追悼〜作曲家の内面にここまで入り込めるピアニストはいないだろうなあ。

誰もが現代最高のピアニストと認める巨匠、マウリツィオ・ポリーニさんが3月23日にミラノの自宅で逝去されました。残念です。

享年82歳は、今ならまだ活動できる年齢に違いありません。

18歳でショパンコンクールで優勝し、かの大ピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタインに「彼はここにいる我々審査員の誰よりも上手い」と言わしめたほどの才能の人でした。

しかしながら、そのあとコンサート活動を一切せず、10年くらい音楽家としての研鑽を積んでいたのは、この人らしい生真面目でストイックさです。
これは私たちがイタリア人に持っているイメージとは真逆の性格ですが、 けっこうイタリアってこういう人が多いんだよね。

でもポリーニさんの音はクリアで明るく理知的、芸術の国イタリアらしくもありました。若い頃の演奏は、冷たい、硬質と評されることもありましたが、それは音楽の持つ数学的な分割を忠実にしていたからだと思います。

マウリツィオ・ポリーニの名演は数あれど、私にとって一番はやはりベートーベンのピアノソナタ全集です。

1975年から2014年という39年間かけて完結させたという、ベートーベンのピアノソナタ全集は、まさに空前絶後です。

これはポリーニさんの演奏すべてに言えることなのですが、作曲家が伝えたかったことが細胞レベルで伝わってくることです。

もちろん演奏技術とか、音の美しさなどは言うまでもなく素晴らしいのですが、聴くほどにベートーベンが何を音楽で言いたかったが伝わってくるのです。
特にベートーベンのように、人が立ち入ることのできない高みに到達した作曲家には、特にそれが際立って伝わります。

森を散歩するベートーベンの姿、星空を見上げるベートーベンが思い浮かぶとでも言いましょうか。

それはショパンやシューマンなどでも同様ですが、これだけ人の内面に入り込める演奏家は、なかなか出てこないだろうな。

というわけで、最近は毎日のようにポリーニさんの演奏を流しています。

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