ギリシャの巨匠、テオ・アンゲロプロス死去


ギリシャの巨匠、テオ・アンゲロプロス死去

驚きました。

金融危機にあえぐヨーロッパを題材にした作品を撮影中、
バイク事故に遭って死去したということで、尊敬していた映画監督だけに残念です。

「旅芸人の記録」
「ユリシーズの瞳」
「こうのとりたちずさんで」

ワンシーン、ワンカット主義という手法で、
5分10分という切れ目なしのカットを重ね、
3時間から4時間の大作で知られるテオ・アンゲロプロス監督。

ギリシャでは、子供が寝つけなかったら、
アンゲロプロスの映画を見せろと言われているそうですが、
今や、このような芸術性の高い作品を作る映画監督は、
先日「ツリー・オブ・ライフ」を公開したテレンス・マリックくらいでしょうか。

こうした作品の特徴は、見る側がツボにはまらないと、
寝てしまうか、ガマンしながら見ることになります。

娯楽性と芸術性というのは必ずしもは背反しませんが、「同じ」ではありません。

映画の本質はあくまで興行なので、収益を見込むためには、
なるべく多くの人間に見てもらわないといけないわけで、
ハリウッドの娯楽大作は、13歳の少年少女が理解できることを基準にしています。

これは出版や絵画の世界でも同じことですが、
アートフィルムと呼ばれる作品の多くが、静かで起伏が大きくないのは、
登場する人物の心や、背景にある社会を浮き彫りにしようとするためでしょう。

それにしてもテオ・アンゲロプロスといえば思い出すのは、
まだ立ち上げた当初の岩波ホールで公開された「旅芸人の記録」です。

1970年代、まだ軍事独裁政権下だったギリシャで、秘密裏に撮影された傑作で、
4時間にわたる長尺ながら、いったんその世界に入ると浸りきってしまう作品でした。

「寝てしまう」
「4時間の忍耐が必要」

はじめはそう言われていたこの作品ですが、見ると存外に面白いので、
岩波ホールではかなりのヒットを記録し、
私自身もこの映画に3度ほど足を運んだ中、どれもほぼ満員だったように記憶しています。

長回し以外にアンゲロプロスの作品の特徴は、
映像から、そこの空気がこぼれおちてくるような臨場感でしょうか。

ここ何年かは、このような作品を自分から行くことが少なくなり、
また、若い頃夢中で見たヴィスコンティ監督作品を見返しても、さほど共感しなくなってきた中、
最近、またこういう眠い作品を見たくなってきました。

それというのも私自身のことを言えば、
サラリーマン時代に仕事の合間を見ながら描いていた作品は、
あまり見る方の立場を考えずに、描きたいように描いており、売れるかどうかは二の次でした。
芸術性には自信ありますが、よく「独りよがり」と言われたものです。

プロとして独立してからは、先ずは売れることを考えるようになり、
最優先はクライアントの満足度になりました。
作品的には別の方向性が見えてきて、それは成果ですが、まだやるべきことがいっぱいあります。

これからは興行と芸術性の両方の要素を、より満足させ高めていきたいと考えています。

今年の年末には展覧会を新宿の京王プラザホテルギャラリーでいたしますが、
その際は、興行的にも芸術的にも高い評価が受けられるようにしたいなあ。

その矢先、アンゲロプロス監督の死去は、
興行的にも芸術的にも成功し、そうした作品を作る続けていた人だけに誠に残念です。

マルチェロ・マストロヤンニ、ブルーノ・ガンツ、ハーヴェー・カイテル。
そんな名優たちがアンゲロプロス作品に出演しているのも、その一環ですね。

10年前に期待を込めて拙著シエスタおじさんを発表した時、
アンゲロプロスが映画にしてくれたらいいな、なんて妄想を描いたものです。
それは恥ずかしながら、妄想に過ぎなかったのですが、妄想で終わらせてしまっているのが、
私のいけないところであります。

今後はビジョンを明確に。
何をしたいのかを明確に押し出していかないといけません。

それにしても、アンゲロプロスは社会性を映画に取り込む監督だっただけに、
今回のギリシャ金融危機には心を痛めていたに違いありません。

ギリシャの巨匠のご冥福を心よりお祈りいたします。

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