昨日アップした絵にある本棚にある本は、どれもタイトルがありませんが、
実は最初に父の愛読書が書いてありました。
字のインパクトが強すぎるので、あとから潰してしまったのですが、
その前、絵の本棚には「坂の上の雲」が何冊かならんでおりました。
坂の上の雲は親爺の愛読書でした。
サンケイ新聞に連載されている時から、父は毎日駅で購入して読んでいたものです。
(当時、小暮家は朝日新聞を購読)。
特にロジェストウエンスキー中将率いるバルチック艦隊を撃破する場面に
父は興奮し、子どもの私にその様子を興奮しながら話聞かせてくれたものです。
長じて、私も30代にこの小説をはじめて読みました。
たしかにこれほど面白い小説はない、といっても過言ではない傑作です。
ただ「坂の上の雲」には、ストーリーらしいストーリーの骨格はなく、
団子の串刺しのように、さまざまなエピソードの連続です。
これは秋山兄弟と正岡子規を中心に、明治の日本人が成長していく様子を描いた
一種の教養小説と見ることができるでしょう。
「坂の上の雲」では、バルチック艦隊撃破がひとつのクライマックスになっており、
この場面はまさに血わき肉躍らずにはいられません。
先の大戦の悔恨が司馬文学の原点にもかかわらず、
これほど戦勝の快感を表現した小説もないでしょう。
遺族が映像化をずっと躊躇していたものわかるような気がします。
NHKのドラマも素晴らしい出来に思えました。
見ていて、明治という時代が
インドの映画館のスクリーンで、
ヒーローに熱狂する観客の素朴さと明るさを思いださせました。
ただ赤坂に住み、乃木会館で結婚式を挙げた人間とすると、
軍人として乃木大将の能力をあまりにクソミソに書いてるのは残念かな(あ、小説の話ね)。
たしかに彼の人格は褒め称えていますけどね。
まあ、大将の操縦ミスで何万人もの兵隊が死にますから、その責任ややむなしかな。
親爺はその点、けっこうドライで
「乃木さんは軍人としては、やっぱり無能だったな」と割り切っておりました。
さすがは物理学者です。
写真は一昨日、家族で食べたすぱじろう・赤坂店のジェノベーゼです。