なぜパンダ?~村上春樹の”近過去”について


画廊に入ると入り口すぐの位置にこの作品がかかっています。
女の人はおおむね「かわいい」と喜んでくれるようですが、
中には「なぜパンダ?」と理解に苦しむ人もいるようです。
どちらの反応も、その人の好みですので、
私がその人の気持ちを変えることはできませんが、
いや~、今回画廊に登場した一連のパンダ作品・・・
絵描きにとっては意外に手強い難物でした。

昨日、月刊美術の(動物好きの)編集者が画廊に来て言ってましたが、
「パンダは実際に、この世に存在していることが信じられない動物」とのこと。
動物の姿かたちというのは、長い進化の過程でデザインされた
自然の創造物ですから、そこには人知を超えたものがあるわけですが、
その中でパンダの姿はきわだったものがあるというのです。

そんな意味で私が描いてる作品というのは、
近過去・・・つまり”もしかすると、こうなっていた世界”かもしれません。
昨日、いらしたお客さまから
「小暮さんの作品は、どの世界を描いてるのですか?
 未来を描いているようにも思えないし、大昔の様子にも思えない」
と聞かれたので、私はすぐさま
「それは、おそらく近過去でしょう」と申しあげました。

近過去とは、村上春樹の『1Q84』を語る上でよく使われる造語のようです。
実は村上春樹さんは苦手な作家で、
「ノルウェーの森」も「ねじまき鳥クロニクル」も途中で投げ出してしまったのですが、
なぜか、人からは彼の小説と同じ世界を指摘されます。
もちろん、数100万部ベストセラー作家と私では比較になりませんが、
”近過去”を描いているという点では共通するのでしょう。
また、私自身は近過去を描いているという意識はほとんどなく、
今回の個展で別のお客さまに、そのことを指摘されて気がついた次第です。

本日、17:00より行うギャラリートークで、
そのことに少しだけ触れてみたいと思います。
みなさまは如何思われるでしょうか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>