現在ヒット中の「ジョーカー」、六本木ヒルズのTOHOシネマズで見て来ました。
傾向は違いますが「ホテル・ムンバイ」を見た後だったので、それほど重たい感じもしなかった……というより、見た後で一種のカタルシスを覚えて映画でした。
バットマンの悪役として、ジョーカーは何度も映画化を繰り返してきましたが、このホアキン・フェニックス版は、バージョンアップされた際たるものかな。
ともかくも、ホアキンなしでこの映画を考えることは出来ない、凄まじい演技でした。
面白いことに、後にバットマンとなるブルース・ウエインの父親、トーマスがこの映画に出てくるのですが、これが完全に悪役として描かれているのです。
主役はジョーカーなので、それはそうかなと思いますが、 それにしても立場が違うとこうまで見方が180度変わるのかという感じです。
映画は精神を病んだコメディアン、アーサー・フラックがどうやって「ジョーカー」へと変身していったのか、という内容です。
どうして、こんな暗い映画がヒットするんだ?!
そんな声の高い映画ですが、まあこの作品に共感する人が多いだけ、世の中が煮詰まっているんだろうな。
ただ、母親と同居するアーサー・フラックの境遇は貧しいものとはいえ、極貧というほどではありません。仏教では人の苦しみの根源は「老・病・死」にあると言いますが、この映画にある主人公の苦しみ悩みは、そこ以外にあるように思えました。
つまり、世の中や人々に承認されない、無視される苦しみ。
人から蔑まされる苦しみ。
嫉妬など。
正直、これらの苦しみは直接生命に関わるものではありませんが、それだけに死んだ方がマシ、みたいに考える人も出てくるように思えます。
もしかすると、この映画に共感する人はその苦しみに惹かれるかもしれませんし、拒否する人は、その部分がイヤだからなのかもしれません。
私自身はアーサー・フラックの生涯に共感できる部分は一つもありませんでしたが、とにかく作品としては完成度が高く、よく出来ていると感じました。
言うなれば、悲劇を見た後に感じるカタルシスを感じたわけですが、もう一度見ようとは思わないかな。
ともかくも一度くらい見る価値はある作品です。