「教養としてのローマ史の読み方」読了致しました!〜歴史を知ることは、未来を知るためにある

本村凌二先生のご著書、「教養としてのローマ史の読み方」を読了いたしました。

イタリアから戻ってから、途中で読むのをやめていた塩野七生先生の「ローマ人の物語」を読み返しはじめたのですが、なにせ長い本なので、どの辺まで読んだのか覚えていない(笑)。仕方なく、数巻分前に読み終えた「悪名高き皇帝たち」から読みかえしはじめることにしました。

ただ、その前のローマ史については、ほぼ忘れてしまってたので、古代ローマのダイジェストをわかりやすく書いた本がないかと思っていたところ、幸い9月にローマに行くという友達から、この本を勧めらました。

はたして読んでみると、いやいや、なんとわかりやすい名著でしょう!

(版元を見れば、なんと拙著「中学生にもわかる仏教」を出したPHPエディターズグループの編集ではありませんか(PHP研究所発行)。章立てもわかりやすく、編集が良い仕事をされてるのがよくわかります)。

さて、観光的に見ると現在のローマの建造物は、大まかに次の3つの時代に分けることができます。

1、BC8世紀頃から、西ローマ帝国滅亡とされているAD476年頃までの建造物。
コロッセオやパンテオン、 フォノロマーノなど。

2、15世紀から16世紀末のルネサンス期の建物。
バチカンのサン・ピエトロ寺院などの教会群。

3、17世紀以降バロック建築。スペイン階段やトレビの泉など。
ただサン・ピエトロ寺院などは現在も改築が続けられているので、
明確な区別は難しい。

▼こちらはヴェネチア広場とカンピドリオ広場の間にある、古代ローマ時代の遺跡に、後年キリスト教絵画を加えたと思われる遺跡。

「教養としてのローマ史の読み方」で取り上げられているのは、「1」に当たる古代ローマ時代のざっくりした流れですね。

これが知ってるようで、意外にわからないことだらけです。

カエサルやアウグストゥスのような有名人は別にして、ティベリウス帝やテルマエ・ロマエで有名になったハドリアヌス帝と言っても、いったいいつの時代に何をした人か、普通はわかりません。あ、私も「ローマ人の物語」はあるとこまで読んでますが、ちっともわかっておりません。

本書は、西ローマ帝国1200年の歴史を、以下の4つの章立てによって、それをわかりやすく説明しています。目次をそのまま取り上げてみると……。

1、なぜローマは世界帝国へと発展したのか
  地中海の統一とカルタゴの滅亡。

2、勝者の混迷、カエサルという経験
  グラックス兄弟の改革、ユリウス・クラウディウス朝の終わり

3、「世界帝国ローマ」の平和と失われた遺風
  五賢帝の治世とその後の混乱。

4、ローマはなぜ滅びたのか
  古代末期と地中海文明の変質。

いや、読んで見て思ったことは、まさに「歴史を知ることは、未来を知るためにある」とは、ローマからはじまったような言葉ですね。

ここには、人類すべての歴史のエッセンスが凝縮されたものが詰まっています。

たとえば……もともと、大して強くもなかったローマが一大帝国を築けたのはなぜか?
これは、進化論などでいう、優れているから生き残ったのではなく、適応したから生き延びたということに少し似ているように思えます。

圧倒的カリスマ、カエサルが心座半ばで暗殺され、その後、カリスマ性には劣るものの、官僚としての能力に長けたアウグストゥスによってローマ発展した。
などという点は、信長、秀吉亡き後、家康が天下を取り、後継者秀忠によって江戸300年の太平をもたらしたことに合わせて見ることができるかもしれません。

また、今の米国の礎はローマ帝国から学んだものが多く見受けられます。さらには彼の国が先の大戦後にした日本統治も、ローマ帝国を参考にしていますね

面白かったのは、現在のアメリカと日本の関係は、ローマとカルタゴの関係に例える人が多いのですが、本村先生はあえて、日本ではなくドイツを例にしていることです。

ドイツをカルタゴに例える本は初めてでしたが、たしかにそちらの方が似ているかなと思った次第です。

まあ、歴史はあまりに複合的な要素が多すぎるので、そんなたとえも簡単には言えないのですが、共通点を見出すことは大切ですね。

時代もテクノロジーも大きく違う古代ローマと現在ですが、 人の気持ちや感情というのは、あまり違わないもの。

大変、ためになった一冊でした。

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