ゲーテの「ファウスト」はお金の話だった!?〜悲劇の第二部を読了しました

先日、FMでグノーのオペラ「ファウスト」を耳にして、そういえばうちにゲーテのファウスト原作(池内紀訳、山本容子の装画)があったことを思い出し、本棚の奥を探してみました。

あった、あった♪

手前味噌になりますが、拙著「シエスタおじさん」にある精霊の唄は、ゲーテの「ファウスト・第二部」の終幕を引用したものでした。
終幕の「神秘の合唱」を愛した人は数多くいて、「一千人の交響曲」と呼ばれるマーラーの第八交響曲の第二部も、まさしくこの場面を音楽にしたものです。

ゲーテに対して不遜とは思ったものの、シエスタおじさんを書く上の参考資料として、20年ほど前に購入したのでした。
文脈の関係で、「シエスタおじさん」では池内紀訳をあえて使わず、編集者の知り合いだったドイツ語の先生に詩の意味を教えてもらい、自分の文章にして書いたものでした。

ゲーテのファウストを最初に読んだのは、背伸びしたい盛りの中学生3年の時でした。父のすすめで700ページはあろうかという分厚い新潮文庫を、ワクワクしながらページをめくっていった覚えがあります。

第一部はわかりやすい話だったので、面白くて一気に読了したのですが、第二部はあまりに長大で難解だったため、字面だけ追いかけて、ようやく読み終えました。ただ、当時マーラーの第八が好きだったことや、最後の「神秘の合唱」だけはなぜか惹かれるものがありました。

シエスタおじさんを書いた時も、実は全部は読まずに、マーラーの第八に使われた歌詞をテキストにして、拙著に使う部分を抜粋したのです。

そんなわけで、今回は第二部から読み返すことにしたのですが、読んでびっくり!

ゲーテの「ファウスト」って、お金の話じゃありませんか!

ファウストをご存知ない方のために、超ダイジェストで申し上げると………

この世のすべての知識を得ながら、真理を知ることができなかった老博士ファウストが、悪魔メフィストフェレスに魂を売る契約を交わし、もう一度若さを取り戻す。

若返ったファウストは、この世のあらゆる快楽と悲哀を体験して、素朴な町娘グレートヒェンとの恋に落ち、エトセトラ、etc。
最後に死して魂をメフィストに奪われる直前、かつての恋人グレートヒェンが天上での祈りを捧げ、ファウストの魂は昇天する。

15世紀頃のドイツに実在したと言われる、錬金術師ドクトル・ ファウストス博士をモデルにゲーテが書き上げた長大な戯曲と言われてる。

第一部は若さを得たファウストが、グレートヒェンと恋に落ち、子を宿しながら、彼女の母と兄を殺してしまうという、壮絶かつわかりやすい話ですが、第二部はそうではありません。(余談ながら、グレートヒェンの名は、プリズンブレイク3、4で、凄腕の女殺し屋の名前に使われてます)。

第二部は眠りから覚めたファウストが再びメフィストを従えて、ギリシャ神話からゲルマン神話の世界など、あらゆる西洋伝説にワープしていきます。
ファウストの弟子だったヴァーグナーが作った、人造人間ホムンクルスも、この中の重要なキャラクターですが、とにかく登場人物が多くて多彩です。

ファウストの恋愛が、第一部で登場したグレートヒェンから、トロイアの美女ヘレナに変わるところも、「なぜ?」って感じで、どんな物語なのか把握しにくい。

また、脳の深い部分まで潜っていく構成でもあるため、かのユングでさえファウストの第二部には近寄らなかったと言われていました。

ところが、ところが!

何よりも驚いたことが先にも申し上げたように、ゲーテの「 ファウスト」はお金の話だったのです。

もちろん、そう言い切ってしまえるほど、ゲーテの「ファウスト」は単純な物語ではありません。しかしながら、そもそも「お金とは何か?」と聞かれて、キチンと説明できる人は少ないと思います。

お金は物々交換だった時代から金銀や貨幣に変わリ、やがてそれは紙幣になり、現代ではクレジットカードやビットコインなどと言う、ほぼ実体のないものに変化していきます。いや、お金とは、もともと実体がないものと言っても良いかもしれません。

今のドイツの一部に当たる、ワイマール公国の財務局長だったゲーテは、そんなお金の本質をよく知っていたのかもしれません。
物語に何度も登場する錬金術もその一環です。

皇帝の言いつけで大量の紙幣を発行して、国が大混乱するのは、のちのナチス台頭前のインフレ……あの5億マルク紙幣の発行を予見してるとも言えましょう。

それとは別に、あたらめて読み直して驚いたのが、手塚治虫の「ネオ・ファウスト」(未完成の遺作)でした。
ファウストの物語を戦後復興期から、1960年代の学生紛争の時代に置き換えたストーリーを今、読み返すとこれまたお金の話。

さすが天才・手塚治虫。
物語を創作する力はもちろん、読む力も凄かったのですね。

第一部はこれから読み返して、またブログアップいたします。

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