「15時17分、パリ行き」見て来ました。
まったくの予備知識なしにに見たのですが、いや、素晴らしいの一言でした!
86歳(制作時)の老境に入ったイーストウッド監督ですが、映画という道を突き詰めていくと、ここまでの境地に達するのかと、さらに尊敬の念を深くした次第です。
映画はテロリスト相手の実話を元にしたアクション映画というわけではありません。テロを阻止して、負傷者した乗客を救った3人の若者の生い立ちを、淡々と追いかけたものです。
イーストウッド作品は「ミリオンダラー・ベイビー」や「ミスティック・リバー」のような、人間の暗部を掘り下げた作品と、「ハドソン川の奇跡」や「インビクタス」のような、人生に肯定的な作品に分かれますが、もちろん本作は後者の方に属します。
何が素晴らしいって、作品に「我の主張」がないことで、そのためにまったくといって良いほどよどみもないことであります。
作り手というのは好むと好まざるにかかわらず、作品を手がける時に「自分」というものを出していきます。自分の作品を、こう見せたい。こう評価されたい。
いや、それがまったくないのですね。
もちろん、現在87歳という年齢になり、充分以上に名声も成功も得たイーストウッド監督ですから、これ以上ほしいものはないのかもしれませんが、それにしても、この映画の透明感には驚かざるを得ません。
いや、60年以上もの間、映画に関わり作品に出続け作り続けていくと、ここまで来るのかと思いました。
映画を見終わってエンドタイトルを見ると、3人の若者の名前と俳優の名前が同じ。
名前が同じ人を使ったのかと思ったら、テロを阻止した3人ご本人が主役を務めているのにびっくり!
負傷者も同じ人で、苦しんでいる姿は演技というより、自分の実際の体験を再現しているのですね(あとで聞いたら、テロリスト役以外、特殊部隊のメンバーを含めて、ほぼ当事者の出演とか)。
それにしても3人が過ごしたクリスチャン・スクールの教育が酷いのにはびっくり。
落ち着きがないと、勝手に発達障害の烙印を押して薬を飲ませようとしたり、管理しやすいよう校則原理主義だったりと、これならまだ日本の校則の方がマシかなと思えるところもしばしば。
「神の思し召しです」
「そんな神ならいらないわよ!」
ちなみに足を運んだ劇場は上野広小路に出来たパルコ7階のシネコン。
新しいだけに椅子といい、音といい、素晴らしい。
さして広くないスペースにけっこうな大画面で、傾斜が高いので前の人の頭も気になりません。
一度、ぜひご覧くださいませ。
ちなみにこの写真は昨年行った、イタリアはローマとベネチアのもの。
映画の中で出てきますので、ロードムービーとしてもお楽しみ頂けます♪