「怖い絵」展は、コワクナーイ♪

本日、話題の「怖い絵」展に行ってまいりました。

平日で90分待ち、休日は3時間待ちという同展ですが、朝イチで行ったおかげで50分待ちは想定内……というか、上出来です。

行列も何やら美術展というより、江戸時代の見世物小屋に並んでいるような感覚で、客層も微妙に違う感じ。

で、けっきょくどうだったかと言うと、「怖い絵」でしたかと聞かれたら、「コワクナーイ(と、インド人風に)」と答えるしかないけど、それは別にして、なかなか楽しい展覧会でした。

展覧会のもとになった中野京子先生の著書は、絵の裏側に描かれている人間の恐ろしい部分を炙り出したご本です。本展覧会にはありませんが、ベラスケスの「インノケンティウス十世の肖像」について書かれた文章は秀逸で、一見怖い絵に見えない、この肖像画の暗部に見事にスポットを当てて書いています。

読書というのは基本、一対一で作者に対峙する作業なので、人間の見えない部分の怖さがよく伝わってくるのですが、展覧会……しかも行列3時間という激混みの会場では、その暗部に光が当たりすぎるところがあって、「怖い絵」を鑑賞するにはちょっと・・という感じにもなってきます。

あまりの人気のせいか、光が当たり過ぎて、中野京子先生の描く「怖い絵」の世界とはちょっと違う展覧会になってしまった感はありますが、反対にポップコーン片手にホラー映画を見るような楽しさがありました。

「怖いもの見たさ」なんて言葉があるくらい、人間ってコワいもの好きなんですね。

面白いことに、今のアニメやマンガにある「萌え」の原型になったような絵がけっこうあったことです。美しい歌声で船乗りたちを水底に引き込んでしまう女神セイレーン(サイレンの語源)を描いた、いくつかの作品がそれでしたし、男を食い物にする文字通りのマンイーターの絵などは、近年の絵師が描いたようでした。

それにしても白眉は何と言っても「レディ・ジェーン・グレイの処刑」ではないでしょうか。

これは掛け値なしに「怖い絵」の真骨頂。
意外なほど大きな絵なので驚きましたが、本物と実物のイメージがそんなに変わらないので、かえってそのことを確認する意味で、この絵だけを見にきても良いかもしれません。

私個人は、本当に背筋がゾゾゾときた絵は一枚だけ。
シムズというイギリスの画家が描いた妖精を描いた作品です。なぜかぞっとしました。地味な絵ですが、これから行かれる方は注目してみてください。

ひとつ不満を言えば、イヤホーンガイドのおかげで、ただでさえ渋滞している展覧会場がピクリとも動かないこと。絵の前でガイドを聞きながら立ち止まってる人が一人二人じゃないのです。

それから上野の森美術館、ロッカーが会場内にないのも困ったもの。
昨日今日のミュージアムだけに今後の改善を期待します。

「怖い絵」展は12月17日までの開催です。

 

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