赤坂の料亭・浅田にて〜鴨の治部煮で思い出した父母のこと

土曜日、赤坂の料亭・浅田で加賀料理のご相伴にあずかりました。長いこと赤坂で暮らしてますけど、料亭でキチンと食事をするのは初めてです。

松茸と鱧(はも)海老ふかしなんて、美味しんぼでしか知らなかったお椀ものも初めて頂き、それは素晴らしいお皿の数々でした。

中でもいわばメインディッシュとして出てきた鴨の治部煮は、高名な加賀料理の逸品と言われてきましたが、これは確かに絶品と言えるお味でした。治部煮とは鴨肉や鶏肉の切り身に片栗粉をまぶし、すだれ麩、野菜と共にだし汁で煮る椀物だそうです。

鱧と松茸同様、鴨の治部煮も実は初めて食したお味でしたが、今から20年以上も前になりましょうか。父が生前、母を連れて金沢に夫婦二人で旅行に言った時、奮発してかの有名な高級料亭「つば甚」でご馳走をした、という話を何度となく聞かされていました。

そのたびに父は「おかあちゃん、ニコニコだったぞ」と嬉しそうに話をしていたものです。

ところが後年、父が亡くなってから母にその話を聞いたところ・・・

「そーね。そりゃ鴨の治部煮は美味しいには美味しいけど、 お父さんがあんまり嬉しそうに『どうだ、どうだ』って言うもんだから、こっちも喜んであげないといけないじゃない」

と、意外にクールでした。

いや、母はほとんど脳と口が直結みたいな、思ったことが即座に口に出る人なのですが、それなりに父に気をつかっていたのですね。

ともかくも親父なりに、母を喜ばせてあげようと思っていたのでしょうが、夫婦は夫婦で意外に思ってることが違うものだなと思った次第です。

味というのは不思議なもので、どんなに美味しいものでも人から「どうだ旨いだろう、旨かろう」と言われると、興がさめてしまうことがあります。父はそのあたりの歯止めが効く人ではなかったので、顔をググイと近づけて母にせまったのではないかな。

まあ、私も妻に「近い」と顔をのけられるので、あまり人のことは言えませんが、「ああ、これが親父が言っていた加賀料理」なのかと感慨深く舌鼓を打っておりました。

ともかくも、この素晴らしい御膳に招待してくださった方には深く感謝をいたします。どうも、ご馳走さまでした♪

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