本日も桜の絵をUP、「柏木の恋」。
源氏物語の白眉、「若菜」の一場面です。
むかし恋文 今メール
極端に男女のいた場所が区切られていた時代、わずかなきっかけで人はすぐ恋に墜ちていきました。禁じられた恋であればあるほど、
燃え上がるのは今もむかしも同じこと……。
この絵の画題は光源氏の正妻・女三の宮の姿を垣間見た。若い柏木がたちまち恋におちる場面。光源氏四十八歳は朱雀院の頼みで、娘である十三歳の女三宮を正妻にもらいます。
あまりに年の違いに源氏も女三宮に物足りなさを覚えますが、陛下(引退した)の頼みはさすがの光源氏も断れません。
この場面は、唐猫が御簾を開けた瞬間、女三宮の姿を見てたちまち恋に堕ちたという、古くからさまざまな絵師が好んでとりあげてきた画題でもあります。
柏木は光源氏の親友・頭中将の息子ですが、あろうことか女三の宮とちぎりを結んでしまいます。それを知った源氏は柏木を恐ろしい視線でひと睨み。
気の小さい柏木は、それがきっかけに病となり、やがて泡の消えるように若い命を散らしてしまいます。
一方、女三の宮は柏木の子を身ごもり、源氏の子供と偽ってのちの薫大将を生みます。光源氏の苦しみたるや、今では想像もできないものだったことでしょう。
主要人物がひとりも幸福でない「源氏物語」、その中でも最大の悲劇であります。