昨日は梅雨の晴れ間、日比谷シネシャンテ3まで現在公開中の映画「北斎 Hokusai」を見に行きました。
画家を主人公にした映画で面白いものを見たことがなかったので、果たしてどうかなと思っていたのですが、良い意味で裏切られました。
面白かった!
画家を主人公にしたもので、唯一面白いと感じた映画だったと思います。
白眉は田中泯さんの演技ですね。
舞踏家としてやってきたことが、すべて絵を描く所作から動きにかけて生きているのがすごい。筆を持つ北斎先生の姿は、まさに画狂人そのものです。
田中泯を見るだけで、この映画を見る価値があると言っても過言ではありません。
特に雨の中、ベロ藍を自分の体にかける場面はまさに圧巻!
何も特別な動きをしてないのに、見るものの心を震わせる動きは素晴らしいとしか言いようがありません。
また、北斎の娘・お栄を演じていた河原れんさんがシナリオを書いていたというのも驚きでした。
北斎の死後わずか20年で明治維新になったという、江戸後期の人でしたが、それでも幕府の力は強かったようで、風紀を乱すとして捕縛や焚書されたりする絵師や版元が多かったようです。
そこは今の緊急事態宣言に通じるところがあるのが面白いところ。
もちろん映画なので幕府の取締が悪役ですが、この時代も幕府側について「風紀を乱す連中、実にけしからん」と言ってた人も多かったでしょうな。
その時代の正義が、後から見た正義ではないのは、これからコロナ禍が明けたらはっきりすることでしょう。
そんなツッコミを心の中でいれながら見てしまいました。
それにしても柳楽優弥さんも田中泯さんも、筆の持ち方が堂に入ってますね。
さすがは役者!
特に田中泯さんの踊るような筆使いは、まさに舞踏家の本領発揮です。
また手のクローズアップで、筆を走らせる場面は、いったい誰が描いているのでしょう? 上手いのにびっくり、私は到底あのように描けません(笑)。
ところで、劇中に「何のために絵を描くか?」とか「こんな日だからこそ、絵を描く」というセリフが印象的ですね。
私も絵描きのはしくれですが、実はまず考えたことがありません。共感する、しないとかではなくです。
このセリフの発想は、むしろ役者としての立場から出た言葉かもしれませんね。
ともかくも「北斎 Hokusai」、まだ上映中ですので未見の方はぜひ足を運んでいただきたいと思いました。オススメです!