猛暑の中、藤田嗣治と同日で、山種美術館「水を描く」を見て参りました。
山種美術館は恵比寿駅から歩くとけっこうな距離。歩道橋を渡り上り坂を歩かないといけないという、猛暑にはややキツい道のりでしたが、涼しい館内と絵をめざして行きました。
山種美術館は証券会社を母体にはじまった日本画の美術館です。
山種証券は現在、SMBCフレンド証券株式会社になっているそうですが、今は山種と関係なさそう。
それはそれとして、日本画の目利きが集めてきたコレクションはなかなかのもの。
大きな美術館ではありませんが、ここの企画にハズれはありません。
今回の企画も、これほど今の陽気にふさわしい展覧会はないでしょうね。
水というのは霧となり、雲となり、雨となり、川となり、はてまた海となる千変万化な物質ですが、わが国ほど水の豊かな国もなく、また絵も画家たちがそれを描こうと腐心した作品も数多く残されています。
プロアマ問わず、絵を描いたことのある人なら、水を描く難しさはよくご存知でしょう。波にせよ、霧にせよ、雨にせよ、川の流れにせよ、形がなく刻々と変化する水の姿を、絵という静止した画面の中に封じ込めるのは、そんなに容易なことではありません。
それだけに、水の姿を描いた絵というのは画家も集中して、それだけ手間暇と情熱を注いで仕上げるわけですから、それなりに見応えのあるものになります。
さらに、妙な情念などは水の力によって火消しされてしまいますから、見ていて楽なものにもなるというわけです。
▲モノクロ画面ですが、パンフレットにもある奥田元宋(おくだげんそう)の「奥入瀬(秋)」と、奥村土牛と川端龍子の「鳴戸」は秀逸。
大きな絵でもありますので、まるで目の前に奥入瀬渓谷や鳴戸のうず潮があるような臨場感で、これは猛暑が吹き飛ぶのも必至!
とはいえ、一旦外に出るとやっぱり、暑い暑い〜!
この日は日比谷線で上野に向かい、ケバブ&ビリヤニのカレーを食して、藤田嗣治を見るという、けっこうなハードスケジュール。
ドライヤーのような熱風の上野公園で、「水を描く」展の涼しさがなつかしいように感じました。