「プラド美術館展」〜カルロスくんに会ってきました!

昨日は桜が僅かに咲きほころぶ中、「プラド美術館展〜ベラスケスの絵画と栄光」を見てきました。

ベラスケスは自分にとって最も尊敬する画家のひとり。及川ミッチーが語る、”ベラスケス7点が一挙来日、これは事件です”という広告文句は、大げさではなく、まさしくその通りと言えましょう。

でも、大混雑を予想してネットを覗いてみたところ、思ったほどではなさそう。展覧会も後半の方が込む傾向があるので、午後2時半くらいに行ってみると、先日行った「ルドルフ二世の驚異の世界展」より混雑具合はおだやかでした。

みなさま、今が狙い目です。行きましょう!
ベラスケス一挙7点は、わが国で二度と見られることはないからです。

プラド美術館といえば、西洋絵画史上の最高傑作と呼ばれる、ベラスケスのラス・メニーナス(Las Meninas/女官たち)をはじめ、彼の現存する作品の4割を所属することで知られます。

私が子供の時分には、やはり同じプラドからゴヤの「着衣のマハ」「裸のマハ」が来て、当時、朝日新聞掲載注だったマンガ・フジ三太郎のネタにもなるほど話題になったものですが、今回のベラスケス7点はそれ以上の「事件」にも関わらず、ほかの展覧会の方が混んでいるようですね。

日本では、まだベラスケスの真価がそれほど知られていないということでしょうか。

それというのもベラスケスというその人が、ゴヤとかゴッホ、ゴーギャン、カラバッジョといった波乱の人生のエピソードが少ないからかもしれません。

↓ こちら拙著「堪能ルーヴル」から、ベラスケスのエピソードを描いたマンガです。

そう。この人は西洋絵画史上、もっとも宮廷画家として成功し傑作を残したということで、フランドルのルーベンスと双璧の人だからです。
ルーベンスの作品も本展覧会で数点展示されています。ベラスケスより先輩にあたり、彼に影響を与えた人でもあるので、合わせて楽しむと良いでしょう。

ルーベンスが膨大な作品数を全ヨーロッパに残しているのに対し、ベラスケスはその業績とは裏腹に作品数はさほど多くありません。フェルメールほど寡作ではありませんが、古今東西の巨匠の中では寡作と言って差し支えないと思います。

それというのも、ベラスケスは宮廷画家として成功したにも関わらず、その宮廷内の公務に多忙だったことが挙げられるでしょう。宮廷内の建築プロデュースや他のアーチストのチョイス、加えて細々した事務仕事などを一手に引き受けていたそうで、そちらに時間が裂かれて、作品数が減ったようです。

ルーベンスもフランドルの外務大臣を兼任していて多忙でしたが、この人は弟子に仕事を分担させて、さながら、さいとうたかをプロダクションの「ゴルゴ13」のような分業制を敷いていたのに比べ、ベラスケスの筆はほかの弟子に真似できないものだったのでしょう。

多くの弟子を使いこなすタイプの画家ではなかったようです。

後に印象派の点描の先駆けとなった、ざっくりした筆さばきは、近くで見ると何だかわからないのに、遠く離れると布や甲冑などがリアルに描かれているように見える、その卓越した技術は、他人にはぜったい真似できません。

さらにそれはベラスケスの筆が早かったことをも同時に物語っていて、多忙なスケジュールの合間を見て描いていたことが伺えます。

ベラスケスの凄いところは肖像画を描く上で、その人格までも描き切ってしまうことでしょう。本展覧会では来ていませんが、「イノケンティウス10世の肖像」に代表されるように、その人の内面までも描いてしまう凄さですね。

そういう意味では、ローマ法王イノケンティウス10世に比べると、展示されているフィリッペ4世はベラスケス同様、穏やかな人格者だったことが伺えます。

展覧会の白眉は、何と言っても「バルタザール・カルロス皇太子の騎馬像」でしょう。静謐な筆さばきから、その人柄を伺えますが、バックの青空の雲はダリの絵の雲と同じ。スペインの空なのですね♪

もちろん展覧会の見どころはベラスケスばかりではありません。

リベーラやムリーリョ、エル・グレコといったスペイン絵画の巨匠の作品や、ヤン・ブリューゲルなどのフランドル絵画、ティツィアーノやティントレットといったイタリア絵画も多数来ています。

それにしてもスペイン絵画というのは、お国のイメージとは背反して、ほかの西洋絵画に比べてあっさり目です。

またリアリズムに徹して、描き込みもくどくなく(西洋絵画・当社比)、見ていてそれほど疲労感に教われることがありません。

「プラド美術館展〜ベラスケスの絵画と栄光」は5月27日まで。
日本では二度と見られないベラスケスとその時代の画家の展覧会、ぜひ足をお運びくださいませ!

 

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