山本兼一「花鳥の夢」読了しました!

山本兼一「花鳥の夢」読了しました。

かの狩野永徳の人生を描いた作品で、これは安部龍太郎の「等伯」と対をなす作品と言って良いでしょう。

↑ 単行本のカバー絵を描いた北村さゆり画伯(私の大学時代の同級生)によれば、山本兼一氏と安部龍太郎氏は一緒にカラオケに行く仲だったとか。
安土城の天守に永徳が描いた襖絵や屏風絵などは、当然残っておらず、その名声の割に残っている作品の少ない絵師なので、フィクションで書いた部分が多いにも関わらず、 安部龍太郎の「等伯」とは少なからずリンクしています。

というより、永徳が等伯に嫉妬するディテールなど、細かいところで「花鳥の夢」と「等伯」は同じ作家が書いたのではないかと思うほど一致しているのが面白いところです。

同じ文献を読んでいたのでしょうが、永徳と等伯、両者の性格から体型、感情のほとばしりなどは、作家どうしが日常的に交際して話をしていないと、これほど一緒にならないでしょう。

興味深かったのが「花鳥の夢」と「等伯」における狩野松栄(永徳の父)の描き方でした。
松栄は狩野元信の息子で、永徳にとっては祖父にあたる人(現在、サントリー美術館で開催中、見に行かないと!)。
「花鳥の夢」で父・松栄は、天才だった祖父と息子にはさまれた凡庸な画家として描かれていますが、小説のラストで、そのケレンのない素直な筆を秀吉に称賛されるという展開になっています。

一方で「等伯」において松栄は、才気走って手に負えない息子・永徳に悩まされる狂言回し的な役割として描かれています。

描き方に違いはあれど、両作家とも凡庸ながら誠実な人物として好意的にとらえてるのが面白い。なんか面白くはないけど、仕事を確実にこなす中間管理職的な感じかな。そういうと一般的な絵描きのイメージと違いますけど、世間で成功してる画家は、意外にそういうタイプがいるものです。
まあ、そういう人なりの悩みも小説内にしっかり書かれているのも良いですね(笑)。

それにしても城の障壁画に描かれていたためか、焼失したりと、永徳の現存作品は10点ほどときわめて少ないのが残念なところですね。

今度は、この作家の「利休にたずねよ」でも読んでみよう。
映画はネットでは朝鮮半島オシとされて、ムチャクチャに書かれてますが、本書を読むかぎりは、原作者がそうだという感じは受けませんでした。

本書でも秀吉を特に悪く書いているわけでなし、たぶん「利休にたずねよ」でも原作を読まないでわるく言ってるのでしょう。ただ、読んでみないことにはわかりませんからね。

少なくとも、この小説は素晴らしいので、ゆっくり味わって読みました♪

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