台湾カステラ哀歌


話は戻りまして、台湾行きの成田エクスプレスでの話。

列車が動きはじめて数分。
母が車中おもむろに、見るからに軽そうな紙袋からカステラを出すと、
「1人2切れづつよ」と配りはじめました。
うーん。搭乗手続き済ませたら、向こうで食べると言ってあるのになあ。

母は昭和ヒトケタ後半の生まれで、それなりの苦労はしていますが、
ものすごく飢えた経験はありません。
食べ物が口に合わなければ、残すしワガママも言う。
まあ、それは常識の範囲なんですが、
けっこうこの人・・・食事のTPOに関しては節操がありません。

おなかが空いていれば、食事前に別のお菓子を余計に食べてしまい、
肝心の晩餐が「食べられない」ことがしばしばですが、
困ったことに自分だけじゃなく、人を巻き込むこともしばしばです。

以前、弟とベトナム料理を食べに行った時、
普段は大食漢の彼があまり食べようとしないので、一体どうしたのか聞いたところ、
母から「行く前にご飯食べてきなさい」と言われ、晩飯を食べてきたというのです。
をいをい! そいつはないだろう!
言う通りに食べてしまう弟も弟ですが、
食事に出かける前にご飯を食べさせる母も母だよね。

そんな過去もあってか、その時つい私も余計なことを口走ってしまいました。

「いりません。
 カステラなんて帰ってくるまで持つんだから、家に置いてくればいいじゃない。
 台湾に行ったら色々いくらでも食べられるんだから」

いやあ、はいはい言うことを聞いていれば良いものを、口はわざわいのもと。
その直後、すぐさま・・・

「アラ、お義母さま。カステラ如何です?
 今マスオに、”何でカステラなんか持ってくるんだ”、
 なんて怒られちゃいましたけど、
 これ福砂屋のカステラですから美味しいんですよ」と母。

「まあ、福砂屋のカステラ♪
 うちは、親戚が長崎にいて・・・ホホ。
 長崎のおうちではカステラで本当に旨いのは文明堂じゃない、
 何といっても福砂屋が一番だというんですよねえ~」と義母。

「私、いただきます」
「私もいただくよ」と家内と弟。

うむむ。素直にカステラ食べてれば良かったかな~。
何だか、行く前から立場がわるいぞ。

「私は朝ご飯、これでいいのよ。
 もうそんな食べる年じゃないし、これで十分」

「私も朝はこれで十分ですわ~」

思えば、母と義母のご飯包囲網・・・この時にはじまっていたのですね。
そう言いつつ、2人の成田ではしっかりオムライスとホットケーキを平らげた2人でしたが
この時、私は”口ごたえだけは決してするまい”、と心に決めたのです。

まあ、おかげでみんな良い思い出作れて良かったかな。

写真はこの日、直行した台湾近郊の都市・九份(きゅうふん)の様子です。
「千と千尋の神隠し」のモデルになった場所です。
ここの屋台は趣はあるけど、どこも臭豆腐のものすごい臭いでいっぱい。
けっこう食べるのに勇気のいるものが多かったです。

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