しばらく前のことでしたが、東京都美術館で開催中の『デ・キリコ展〜不思議の世界へ、ようこそ』を見てきました。
パナソニック汐留ミュージアムで見て以来、10年ぶりの大回顧展。
4〜5年前だと思ってたけど、もう10年経つんですね。年のせいか時間が経つの早い!
デ・キリコは素晴らしく下手くそな画家でした
ところで今回、またキリコの絵を見直して、私は大変な間違いをしてるのに気づきました。キリコは下手くそな画家でもなんでもなく、素晴らしく達者な画家でした。
絵描きのくせに、私の目は節穴ですね。
偉大なデ・キリコに大変失礼いたしました!
とはいえ、キリコという画家…テクニック的なものに執着がなかったことは確かだと思います。後付けの知恵ですが、パナソニック汐留ミュージアムで展示された作品に、たまたまそういう作品が多かったのかなという印象です。
展示が多かった初期の作品を見ると、若い時点でテクニック的なことはほとんど昇華され、それ以上に追求する必要がなかったのかもしれません。
面白かったのは、キリコの代名詞ともいえるマネキンの登場は、一時的なものではなく、何度もライトモチーフ(芸術作品で、根底をなす思想)として登場することです。
このマネキンたちがいったい何なのか?
それは作り手のキリコに聞いてみないとわかりませんし、もしかすると画家本人にもよくわからないのかもしれません。
絵画に限らず、アート全般に言えることですが、絵の表面に描かれているものより、その裏側にあるものの方が重要だったりします。
いわゆる「行間を読む」と言ったことでしょうか。
キリコ自身が提唱した「形而上絵画(Metaphysical painting)」という言葉は、まさに物理的なものを凌駕した不思議の世界です。
絵の中に入って遊ぶ。
これは絵画において一番面白いものが見られることですから、ぜひこの夏に『デ・キリコ展』に足を運ぶことをおすすめいたします。