昨日は六本木の新国立美術館で開催中の「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年展」を見てきました。
ルネサンス最盛期のフラ・アンジェリコから印象派のゴッホ、ゴーギャンまでの西洋絵画500年を一堂に会した作品群は本当に見事!
アメリカの個人コレクターからの寄贈や、関係者の努力によってコレクションを形成されたとあって、ヨーロッパの美術館展とは明らかに違った様相です。
先ず最初に、入り口すぐのところに展示されているフラ。アンジェリコの祭壇画をご覧ください(リンク先トップ参照)。
フラ・アンジェリコはドメニコ会の修道僧で、その名はイタリア語で天使僧を意味します。敬虔なお坊さんだったアンジェリコですが、意外に器用な人で、顧客の好みに合わせてハデ系、ジミ系を描き分けていました。
この展示作品「キリストの磔刑」は明らかに前者で、アメリカ人コレクターの趣味を表してますね。フィレンツェのサン・マルコ美術館のフレスコ画と比べると、その違いは明らかです。
▲サンマルコ美術館の「受胎告知」(ウィキより転載。本展には展示されてません)。
また興味深いことのひとつに、メトリポリタン美術館展を見ると、画家によって宗教心の濃い薄いがハッキリ分かれていることでした。
今のアーチストが心のおもむくままに作品を作るのと違い、当時のヨーロッパの宗教画というのは、ある意味ビジネスでした。絵の注文は使用する材料によって、価格や納期などが決められ、契約書などがかわされていたようです。
フレスコ画だと面積あたりいくらとか、金やラピスラズリを何グラム使うからいくらとか、下絵で採用した構図は厳守するなど、けっこうビジネスライクだったようです。
当然、画家も仕事として絵を請け負うわけですが、そこの宗教心の濃い薄いはおのずと出てきます。
言うまでもなく、フラ・アンジェリコの祭壇画にはキリストに対する愛が満ち溢れていますが、ラファエロの「ゲッセマネの祈り」などには、そこまでの信仰心は見られません。たまたま私がそう思っただけかもしれませんが、メトロポリタン美術館展…一歩引いた感じで西洋画が見られるのも面白いところですね。
また、実物を前にして驚いたのが、欧州のミュージアムを見た後に感じる重さや疲れがあまり感じられなかったことです。