小説「ジウ」と、北辰一刀流の千葉周作


先日、プール友だちから誉田哲也の「ジウ」をすすめられて読んでいます。

面白いんだけど、並行して読んでるものが多いのと、
この小説・・・なかなか毒が強くて休みながら読んでいるため、ただいま2巻目に突入して一休みです。
(テイストは違うけど、馳星周の”不夜城”に似た気持ち悪さダナ)。

主人公のひとりは、肉食系・・・というか野獣のような女・伊崎基子、女性初のSATの隊員です。
(ドラマは見てませんが、基子役は黒木メイサ)。
ジェームズ・キャメロンが好みそうな強い女性ですが、
その背景は殺伐としていて、訓練の時も相手を倒し殺すことに腐心する、闘うために生まれた女。
訓練は訓練、実戦で人を殺すのとは違うのよ・・・。

作り話とはいえ、この辺まで読んでちょっとした違和感を覚えました。
(以下、本とはあまり関係ない雑感です)。

かの北辰一刀流の開祖、千葉周作が竹刀を用いた剣術をはじめた時、
他の流派の道場では、「竹刀の稽古で何ができる」と一笑に付していたそうですが、
いざ、他流試合をすると北辰一刀流の連戦連勝。

普段、木刀を使って稽古をしていた流派は、これにて考えをあらためたそうです。

つまり、真剣や木刀による稽古はケガをしたり、場合によっては命を落とすことも多く、
一度勝敗を決めると、大ケガによる再起不能も多かったと思います。
きちんとした太刀筋を五体満足で身に付けるには、
竹刀によるシミュレーション稽古が最も効果的と考え、それを実践したのでしょう。

また、合気道は試合というものがなく(確か、試合はなかった?)、
競う時も「型」の出来不出来で審査するため、合気道は武道として強くない、
なんてことを言う人もいますが、それは間違いだと思います。

およそ「型」というものの多くは、関節を逆にとって投げる危険な技が多く、
関節を取られて、コンクリートに頭から落とされたら、大抵の人間は大ケガか死ぬかどちらかです。

だから柔道でも空手でも、「型」の技は「反則技」がほとんどだと記憶しています。

(一本背負いでも、”型”では逆関節をとって投げる。
 そのまま投げたので腕が折れるので、相手はわざと飛ぶか、投げられる。
 これを日常的にやってるがプロレスで、ショーとはいえ、彼らの強靭さはまさに超人です!)

逆に言えば、反則技は実戦的とも言えます。
女性が男性を倒したり、小さなものが大きなものを倒すには、禁じ手が最も効果的。
目つぶし、金的(男性限定)、噛みつき、素手の相手に道具を使う。
こうした汚い反則技は、強いから反則なんですね。

しかしながら効果的だからといって、稽古の時にいきなり目つぶしをかければ、
相手はそれでおしまいです。

おそらく、千葉周作の前は木刀による稽古で、”かたわ”になった人が大勢いたのでしょう。
(放送禁止用語ですが、この場合に最適な単語なので、あえて使います)。
そんなことをすれば、大半の人間が一生使い物にならなくなる。

そのために「型」の稽古で、危険な技を覚える。
そして自分が使わなくても、技を知ることによって、それを防ぐことができるというわけです。

その点が、ジウの基子のキャラについて、何か違和感を覚えるブブンなのですね。
実戦は実戦で覚えるしかないはずで、訓練で「反則技」はないだろうって。
まあ、もちろん誉田哲也さんはおわかりになって書いてはいるのですが。

小説自体はすごく面白いので、たぶん3巻全部読めそうです。
終ったら「武士道シックスティーン」でも読んでみっぺかな。

小説「ジウ」と、北辰一刀流の千葉周作” への4件のコメント

  1. 真理
    >実戦は実戦で覚えるしかない

    です、御意。

    大昔、歌舞伎町で酔漢にからまれて、
    アッシ自身が怖さから、「平手」で祖奴の顔面を殴ったら、
    酔漢と呼吸が合ってしまったらしく、
    2、3m吹っ飛んで、両足が宙に浮いていた、
    当時分別してないごみの山、
    割れたビール瓶とか在ったかも知れない、
    の中に崩れ落ちちゃった。
    それをスローモーションで見ていた。
    相手の状態を確認せず、直ぐに踵を返し、一目散で逃げた。
    翌朝各種新聞を買い漁り、歌舞伎町で殺人事件、
    なんて記事が踊ってないか、探した。
    何事も無く、今日に至る。
    (時効ですよね???)

    あの実戦の感触は今も忘れない。

  2. Unknown
    なるほど勉強になります。

    いまさらながら武道をしたくなりました。

  3. 天の配慮?
    お頭さん、おはようございます! 

    そう言いつつ、実戦の経験のないわたくしでおます。

    それはマイクロセカンド現象ですね。
    いきなり武道の奥義を経験したとはさすがです。

    よく力士でも、一度も使ったことの技がとっさに出たと言うことがありますが、
    おそらくはそれに似たことが起こったたのですね。
    考えずに体が動いたというのがすごいです。

    >翌朝各種新聞を買い漁り、歌舞伎町で殺人事件、

    相手が死なずに良かったですね。
    手を出さなかったら、自分が死んでたかもしれませんから、
    反撃できたのは天の配慮だったかもしれません。

  4. お好みのレスラー
    わらべさん、おはようございます!

    私のは畳水練です。
    実地はそんなもんじゃないのでしょうが、
    知らないより知ってた方がマシ、という感じでしょうか。

    わらべさんのお好みのレスラーは?

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