英国王のスピーチ


先の日曜日、投票のあと「英国王のスピーチ」を六本木のTOHOシネマまで見に行きました。

久々の映画鑑賞にワクワクしたのですが、
あれほど好きだったCG多用のハリウッドSFX、その予告編に辟易する自分にびっくり。

これらの娯楽大作(予告ですが)・・・年と共に油っこい料理が苦手になるようなものかもしれません。
まして震災の津波映像と重なってしまい、見ていてちょっと苦しくなりました。
被災したわけでもないのに、だらしない話ですが、わざわざ観たくないという感じかな。

さて、本編はといえば、そんな気分を払拭するような素晴らしい作品でありました。

ストーリーはまことに単純、
心に傷を持つ吃音の英国王が、ある言語聴覚士のトレーニングで、
国民を鼓舞できるようなスピーチを披露できるというお話です。

興味深かったのは、子供の頃に元々左利きだったのを、
父親に咎められて右利きに矯正したことが、
吃音につながっているというくだりです。

興奮したり緊張すると吃音がひどくなり、
反対に歌ったり、怒って罵倒する言葉になるとスラスラ出てくる。
映画の中に因果関係の詳しい説明は一切ありませんでしたが、
子供の頃の厳しい縛りが、吃音につながったことが暗に示されていました。

これを見て、私は体の曲がりを矯正し、脳の負担を軽くする(一例ですが)
神田橋條治先生の療法を思いだしました。
ああ、病根とは心と体の深いところにあったりするものです!

吃音を表面的なトレーニングで解決するのでなく、
心の奥に閉ざされた傷口を解きほぐしていくという・・・
そのプロセスはまことに感動的でありました。

それにしても王さまというのは不自由な人種です。
まわりの人がみなアタマを下げてくれる以外、あまり良いことはありませんね。
いや、病気になるわけだ。

オスカーを受賞したコリン・ファースのジョージ6世と、
「シャイン」でスコット・ヘルフゴッドを演じた
ジェフリー・ラッシュの言語聴覚士の演技は言うにおよばず。

特にくそ真面目な王さまが、興奮するほど吃音が激しくなるくだりや、
民衆の前でスピーチができなくなるくだりは、
映画とわかっていても見ていられなくなります。

それだけに最後のスピーチは感動的。
バックに流れるのはベートーベンの第七の2楽章・・・
これも第九と同様、神さまが降りて出来上がった、特別な時にかかる音楽だと思いました。

ともかくも英国王のスピーチ、
まだの方は、いちど映画館に足を運ぶことをオススメいたします!

ああ、Art Blogと銘打っているからには、たまに映画の話題くらい書かないとね。

英国王のスピーチ” への4件のコメント

  1. ケース
    こんなケースがありました。わたしの業界のある設計事務所の所長が「どもり」でした。そしてその事務所で働いている若い子もついでに「どもり」でした。わたしは電話するたび気の毒に思いましたが、あまりにひどいので「おい、「どもり」直せよ」と言ってしまいました。悪い事を言ったかなと思ったら、ピシッとしてだんだんとどもりが無くなってきて今は両名とも普通(多少は出るけど)に話せるようになりました。

  2. ジャック・スパロウは
    正ちゃん帽さん、おはようございます!

    ふーむ。
    その一言で吃音が治ったかどうかわかりませんが、
    何かのきっかけになったのでしょうか。

    まあ、そういう時の注意は難しいですが、
    侮辱して言うのと、その人のことを思って言うのでは違いますから、
    本人もそれがわかったのかもしれませんね。

    ところで相変わらず、すずめは見当たらないでしょうか?

  3. 拝見しました
    私も地震の後に見ました。感動の実話でした。戦争を美化するイギリスならではの作品とも言えます。ロンドンの「War Memorial Musium」に行った時の違和感は、今でも忘れられません(楽しい音楽で始まり、楽しく終わる)。

  4. 極悪な日本人が
    naotさん、おはようございます!

    そうそう、視線が完全にイギリスですね。
    先日見た、韓国ドラマ「済衆院(チェジュンオン)」では、ひどい日本人が極悪非道の限りを尽くして不愉快でしたが、
    (ドラマは面白いんだけど)
    日本とドイツって、映画やドラマで割食ってる気がします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>