猛暑の中、六本木TOHOシネマズで話題の映画『国宝』見てきました。
平日お昼1時からの回は、ほぼ満員。人気の高さが伺えますね。
そして噂通りのすべてが圧倒的な作品でした。
ただ、あくまで個人的な好みになりますが、とにかく見て疲れたなあ…というのが正直な感想です。映画館を出た後の感触は、若い頃にテアトル東京で見た『ディア・ハンター』を思い出しました。映画の内容は全然違いますが、とにかくインパクトの強さに圧倒された、あの感覚です。
見る前は京劇を描いた『覇王別姫』のような、LGBTの要素の濃い作品だと思ってましたが、実際に見るとそんな要素は見当たりませんでした。
しかしながら、意外だったのは「女形」を描いた作品でありながら、そこにあったのは徹頭徹尾、男の世界だったということです。
首筋に白粉を塗る場面は、まさに男の首!
それがメイクを重ねるごとに女形の姿に変身していきます。
しかしながら女形に返信した吉沢亮も横浜流星も、本物の女性には見えません。これが実際の歌舞伎の舞台であれば、そんなことはないでしょうが、カメラのレンズは冷酷です。
いや、おそらく李監督はそれをわかっていて撮影しているのでしょう。むしろ「女形というのは、男性が演じているんだ」ということが、わかるように撮っているように思えました。

人間国宝を演じる田中泯も、シワが際立つようなメイクで撮影しているのが、かなりリアル。女形のカツラの生え際も、カメラはしっかり捉えています。
吉沢演じる立花喜久雄と、横浜流星演じる大垣俊介は、時に血みどろになるまでの殴り合いのケンカをしますが、これは本当に男の世界ですね。
女性の姿をした男性が、スクリーン狭しと暴れ回るのを3時間見せられるのは、なかなかにキツい(笑)。
そのためか、高畑充希や最上愛といった本物の女性が出てくると、なんだかホッとします。

それにしても1年半くらいで、歌舞伎役者に見えるような芸を習得した吉沢亮も横浜銀星もお見事。
歌舞伎通の間では、映画では大阪歌舞伎の世界のはずなのに、演じられているのはお江戸の歌舞伎だったという不満があるそうですが、そこまで演じろというのは、役者に酷じゃないかな。
ここまで完成度を見せる制作サイドですから、そこは先刻承知だったと思います。
歌舞伎の演技指導やスケジュールの関係で、お江戸の歌舞伎になったのではないかと思います。
ともあれ映画『国宝』。
自分の感覚には合わなかったけど、一見の価値アリです。


