連休こどもの日の昨日は、サントリー美術館『酒呑童子ビギンズ』展に行ってきました。いや〜近年稀に見る面白い展覧会でした!
何が面白いかって、そりゃ絵巻物のストーリー展開ですよ!
長いこと色々な展覧会を見ていますが、絵巻が丸ごと全部見られるなんてほとんど初めてのことです。 以前、上野トーハクで公開された鳥獣戯画展は、それに近かったかのですが、それはひとつの物語があるわけではありません。
今回の酒呑童子展は、映画さながらに物語を見せてくれます。
サントリー美術館の口上には「現代のマンガやアニメにも息づく、日本人が古来より親しんできた鬼退治の物語」とありますが、私も酒呑童子の存在を知ったのは、永井豪先生の『手天童子』からですから、まさにその通りですね。
▲東京ミッドタウンでは鯉のぼりの展示もされています。
展示の中心になっているのは、室町時代に狩野派を確立した狩野元信の重要文化財・狩野元信筆「酒伝童子絵巻」(サントリー本)です。
物語はシンプルな鬼退治のお話で、概要は以下の通り(Wiki参考)。
一条天皇の時代、京の若者や姫君が次々と神隠しに遭った。安倍晴明に占わせたところ、大江山に住む鬼、酒呑童子の仕業とわかった。そこで帝は源頼光(みなもと・よりみつ)らを征伐に向わせた。
頼光らは山伏を装い鬼の居城を訪ね、一夜の宿をとらせてほしいと頼む。酒呑童子らは源頼光らが自分を成敗しにくるとの情報を得ていたので、警戒し様々な詰問をする。なんとか疑いを晴らし酒を酌み交わして、鬼たちと酒宴を酌み交わす。
酒宴には拉致した女性の血で作った生臭い酒や、太ももを切った刺身などが振る舞われたが、頼光らはそれを飲み食いする。鬼らがへべれけになったところで、頼光一行は八幡大菩薩から与えられた毒酒を振る舞い、酒呑童子の寝所を襲い、身体を押さえつけて首をはねた。生首はなお頼光の兜を噛みつきにかかったが、仲間の兜も重ねかぶって難を逃れた。
▲飛んできた酒呑童子の生首に噛みつかれる頼光。さすがは武士、驚いてません。
さて、展示の本番は文字通り『酒呑童子ビギンズ』で、なぜ酒呑童子が生まれたか…という、いわばエピソード1がはじまるのです。
いやいや、これって「なぜダースベオダーが生まれたか?」という、スターウォーズ。エピソード1そのものじゃありませんか!
以下、サントリー美術館の口上。
スサノオノミコトによって酒に酔わされ退治されたヤマタノオロチの亡魂が、伊吹山に飛んで伊吹明神となり、その息子として生まれたのが酒呑童子だというのです。
その息子は10歳で大酒飲みになり、手がつけられないので伝教大師・最澄のもとに預けられるのですが、そこでも破門にされてしまいます。そして100年後、息子は酒呑童子となって、都で悪事の限りをつくすという…。
ともかくも絵巻は物語と一体化しているもの。
展示を見ながら、「次はどうなる、続きが読みたい!」という気持ちになるなんて、展覧会を見てはじめてのことでした。
『酒呑童子ビギンズ』展は6月15日まで。
こんなに面白くて楽しい展覧会、滅多にありません!