一昨日から開催された藤田嗣治展、早々と行って参りました。
上野の東京都美術館周辺は熱波の坩堝状態で、ドライヤーのような熱風が吹きすさぶ中に出かけた甲斐あってか、会場は比較的空いておりました。
本当に素晴らしい展覧会でしたので、涼しくなる会期後半は激混み必至!
なるべく早めのご来場をオススメいたします。
実はわたくし、藤田嗣治は何度も見ていて、先の近代美術館の展覧会ではさほどに思わなかったためか、この偉大な画家をそれほど良いとは思っていませんでした。
しかしながら、今回の展覧会は没後50年という企画ということもあって、宣伝文句にある「量、質ともに、史上最大級の大回顧展です」という看板に偽りなし、本当に見事な展覧会でありました。
以前、近代美術館で藤田嗣治展を見た時は、「乳白色の裸婦」以外の作品があることに驚き、そちらに気を取られた記憶があります。
藤田は81歳という生涯の中で、さまざまなスタイルを確立した画家であります。
本拠地を日本とフランス以外にも、南米や北米に住まいを変えており、その度スタイルを変えています。
南米時代は兼子国義らに影響を与えたのではないかと思われるほどワイルドなスタイルの絵を描いてますし、戦時中に日本に戻った時は、乳白色の裸婦とは真逆な赤茶色の戦争画を描いています。
また、秋田に招かれた時は、斎藤真一を思わせる土着的な絵も描いているなど、その多様性は目を見張るものがありました。
とはいえ、やはり藤田嗣治の真骨頂といえば、「乳白色の裸婦」、そして肖像画の数々に違いありません。
面白かったことは、これら乳白色の絵は一時代だけに描かれたわけではなく、南米時代、戦争時代を過ぎた後で、いくつもの時代に分かれて描かれていたことです。
最もフランス的な香りの漂う「カフェ」……一番上の写真にあるポスターにもなった絵は意外にもニューヨークで描かれたものだそうで、フランス時代を懐かしんで制作されたものなんだとか。
注目すべきは、肖像画や裸婦のわきにいる猫ちゃん。
明らかに肖像画の主より時間をかけて描いているのが、画家のワガママと言えましょうか。こちらもじっくり見て頂きたいですね♪
また素晴らしいのが静物画で、▲パンフにある「私の部屋、目覚まし時計のある風景」。これは本物を見ていただかないと、その真価はわかりません。
藤田嗣治の絵はどれもそうなのですが、いわゆるマチエール(画肌)が重要な絵です。絵具のこんもりした白は、印刷物やパソコン画像では決して再現できないもの。